自業自得記録地獄

主にACミランとセリエAに関する備忘録。

22-23 CL 準々決勝 2nd leg vs ナポリ(A) 16年ぶりのベスト4

 

 中5日での再戦。間のカンピオナートはそれぞれ大幅なメンバー変更を行い、互いに引き分けで終わった。両チームのFPで唯一中2日3連戦に全て先発するのはディ・ロレンツォのみ。試合前夜はミランが宿泊するホテルの外にナポリファンが集結し、花火や爆竹などの騒音で睡眠の邪魔をするアウェイの洗礼も浴びた。

 

incursore.hatenablog.com

 

ボローニャ戦後の2日間

 

 特になし。

 

先発&フォーメーション

 ミランはイブラ、デスト、ヴランクス、アドリ、バカヨコ、タタルシャヌ、バスケスが登録外。トナーリ、トモリ、クルニッチ、カラブリア、バロ=トゥーレが累積リーチ。

 ナポリシメオネが負傷欠場。キム・ミンジェとザンボ・アンギサが出場停止。

 

スタッツ&控え&ハイライト

Napoli-Milan | UEFA Champions League 2022/23 | UEFA.com

 

流れ

 

 ナポリは右サイドから組み立て、エンドンベレがダブルボランチ気味に降り、ジエリンスキがトップ下気味にポジションを取る。ミランは基本はミドルプレスか自陣でのブロック。レオンは過去の2試合よりもスタート位置を下げてディ・ロレンツォを監視。ナポリはトナーリとレオンをエンドンベレ、ディ・ロレンツォ、ラフマニに食いつかせてクルニッチの脇、トモリとテオの前のスペースへの侵入を狙いつつ、孤立させたクヴァラへの展開とドリブルで切り崩そうとする。ミランはクルニッチがアンカー気味になることでスペースとサイドの1vs1をカバーし、クルニッチのカバーにはベナセルが戻り、CBを含めて中央を固めて守る。

 ミランのビルドアップはクルニッチがアンカー気味に、トナーリが左に開いてテオとレオンを押し上げる2-2ビルドアップ。ナポリはジエリンスキが前に出て4-4-2でハイプレス。ミランはメニャンを使っていなしつつ、無理ならロングボールをジルーに蹴る。トナーリはエンドンベレを釣り出せると、右利きの利を生かしてワンタッチでブラヒムやベナセル、内側に入ってきたテオなどロボトカ1人ではカバーしきれない中央への縦パスを狙う。

 

 20分、ミランゴールキックから繋ぐ。メニャン、ケアー、クルニッチと繋いでクヴァラが釣り出され、カラブリアにロボトカが出る。カラブリアが内側に入ったブラヒムにパスを通してべナセルが落としを受ける。べナセルが左のレオンに展開し、レオンはオーバーラップしたテオに預けて中央でリターンを受ける。それをレオンがワンタッチでブラヒムに繋ぐと、マリオ・ルイの足が遅れてレオンに当たってミランがPKを獲得。

 21分、ジルーのPKをメレトが左に飛んでセーブ。

 25分、カラブリアのクリアをジルーとレオンが収められずナポリが二次攻撃。右に開いたフリーのエンドンベレからべナセルの背後を取って内側を上がったディ・ロレンツォにパス。ディ・ロレンツォがクルニッチを釣りだしてマイナスの折り返しをフリーのジエリンスキが撃つがメニャンの正面。

 27分、ナポリの左サイドのスローインにプレスをかけるミラン。メレトからファン・ジェズスへのパスがずれ、ファン・ジェズスが蹴り出したボールをトナーリが拾い、ベナセルとのワンツーで中央を割って入りジルーにパス。ジルーが反転からシュートを撃つがメレトが足でセーブ。

 33分、ナポリはポリターノとマリオ・ルイが負傷交代。

 35分、中央でフリーになったジエリンスキが間を運び、中央に入り込んできたディ・ロレンツォにパス。ディ・ロレンツォがスルーしてファーサイドでフリーのロサーノに繋がりそうになるが、レオンが戻ってボールを掻き出す。

 42分、クヴァラから中央でエンドンベレが横パスを受けるがトラップミスでレオンがボールを拾うと、自陣ミドルゾーンから一気にエンドンベレ、ディ・ロレンツォ、ラフマニをかわしてPA内に持ち込み、ゴール前で折り返しを受けたジルーが押し込んでミランが先制。0-1

 45+3分、クヴァラのバックパスをオリベラがワンタッチでアーリークロス。トモリとオシムヘンが競り合い、こぼれ球をケアーが蹴り出そうとするがオシムヘンがブロックしこぼれ球をゴールに蹴り込むが、ケアーのクリアがオシムヘンの腕に当たってノーゴール。

 45+6分、0-1で前半終了。

 

 後半開始30秒、クヴァラが左サイドで受けてカラブリアと1vs1。PA内の深い位置まで運び、切り返しでカラブリアをかわして右足でシュートを撃つが枠を捉えられない。

 55分、押し込むナポリ。ファン・ジェズスからエンドンベレに縦パス。トラップが大きくなったところをケアーが掻き出すがこぼれ球をジエリンスキが拾う。左のクヴァラが受け、オリベラのランニングでラインを下げてライン間のエンドンベレに横パス。エンドンベレがシュートフェイントトラップでケアーをズラして左足で撃つがクルニッチとケアーがブロック。

 57分、左サイドで受けたクヴァラがすぐに仕掛けて、カラブリアとクルニッチの間を強引に突破し左足でシュートを撃つが枠を捉えられない。

 63分、ナポリの左CK。クヴァラのインスイングのボールをファーでフリーのオリベラが合わせるがミートできない。

 73分。押し込むナポリ。ロボトカから内側のディ・ロレンツォに縦パス。ディ・ロレンツォのクロスにファーでラフマニが頭で合わせるが枠の上に外れる。

 74分、ミランはオリギがLWGで、レオンを最前線に変更。

 79分、エルマスから内側のロサーノに縦パス。ロサーノは中央のオシムヘンに入れ、オシムヘンがケアーを背負ってキープしロサーノにパス。ロサーノはオリギの背後をオーバーラップしたディ・ロレンツォに繋ぎ、ディ・ロレンツォの折り返しがトモリの地面に着こうとした腕に当たってPK。

 81分、クヴァラのPKをメニャンが右に飛んでセーブ。

 83分、ミランはオリギをCFに戻し、サレマがLWGに入る。

 88分、ナポリの左CK。クヴァラのインスイングのボールにオリベラが頭で合わせるがミートできない。

 90分、クヴァラのアーリークロスエスティゴーが頭でかすめるがメニャンが弾き出す。

 90+2分、ナポリがCKのセカンドボールからクヴァラが右のラスパドーリに展開し、ラスパドーリが左足でDFの手前にクロスを上げると、オシムヘンが頭から飛び込んでネットを揺らす。1-1

 90+4分、1-1で試合終了。2試合合計2-1でミランが準決勝進出。

 

ミラン

 

 序盤からナポリがボールを保持して両サイドから崩そうとしてくるが、カラブリアがクヴァラをほとんど封じ込め、オシムヘンの動きをケアーとトモリで挟み込んで制限し、中盤の3人が気を利かせて危険なスペースを埋め、シュートコースを塞ぐことを90分やりきり、レオンとメニャンの超人的スキルで試合を決めた。最後に優勝した06-07シーズン以来16年ぶりの準決勝進出を果たした。

 

 序盤にトモリのところでビルドアップミスが多く、良くない試合の入り方をしてしまった前回対戦からビルドアップを変更し、トモリはシンプルな繋ぎに徹してトナーリが左からの配球を担ったことで自陣でのビルドアップミスを減らすことには成功した。前進することもできていたが、前線でのパスミスが多く、チャンスまで繋げることはできなかった。ただ、PKを獲得したビルドアップは出てくる相手の背後をよく見てパスを出し、カラブリアからブラヒムに入った後の流れは理想的だった。

 被保持はレオンも守備意識を高めてピンチをカバーするなど、チーム全員のハードワークが実を結んだ。ナポリが繋げる、崩せるチームであるが故に、なりふり構わずボックス内に攻め込んできたのが終盤の5分程度だったのは助かった。オシムヘンのアクションが通常より少なかったのは、負傷明けということもあるだろうが、先述したようにケアーとトモリに挟まれて身動きがとれなかったのだと思う。4バックでマンツーハイプレスとなると今季は厳しい場面も多くあった2人だが、ミドルプレスで2人でワントップを抑える仕事をリーグ戦を含む3試合でほぼ完璧にやってのけた。

 そのミドルプレスを成立させたのは中盤の3人による文字通りのハードワークだ。トナーリのプレス、クルニッチのカバーリング、ベナセルのプレスバックのうち、一つでも欠けていたらCBが晒される場面が増え、さらにピンチが増えていたのは間違いない。守備の働きに加えて、この試合において、クルニッチはボールロストが両チームのFPの中で最少の1回で攻守に安定をもたらし、ベナセルは被ファウル数が両チーム最多の5回で、セカンドボールを拾ってファールをもらうことでトランジションを落ち着かせ、ミランの保持の時間を作り、被保持の時間を減らすことにも貢献した。

 そして、その戦い方で決定的な仕事が求められるエースと守護神が大仕事を果たした。レオンは約74メートルを運んで3人を置き去りにし、決定機を逃していたジルーが押し込むだけのラストパスを出すという怪物の所業を見せつけた。レオンが守備にも参加しながらあのロングカウンターを成立させたのは今後のチームビルディングにも小さくない影響がある。メニャンのPKセーブはその後のミランにエネルギーを与えて、ナポリの攻撃時間を減らす効果もあった。

 昨季のスクデットも大方の予想を覆す結果だったが、今季はCLで望外のベスト4まで進出した。今季の決勝の地が因縁のイスタンブールであることも含めて、もしかすると、本当に奇跡を起こす男たちなのかもしれない。

 

 次は中4日で日曜日にホームでレッチェと対戦。良い雰囲気をカンピオナートにも繋げたい。

 

ナポリ

 

 セリエAで圧倒的最多得点のチームが3試合全てで決定力を欠いた。決めるべきチャンスは少なくかった。

 マリオ・ルイとポリターノの負傷交代は痛かったが、前半からもっとオシムヘンが好む高めのクロスを入れれば良かったかもしれない。クロスの精度が低く、手前のCBに引っかかることが多かった。

 素晴らしいチームであったことは忘れないので、今季はスクデットで我慢して。

 

主審 Szymon Marciniak (POL) VAR Tomasz Kwiatkowski (POL)

 

 ポーランドのセット。安定したレフェリング。35分のレオンとロサーノの接触はグレーゾーンでVARは介入できなさそうだし、ナポリが勝っていたら話題に上がらなさそう。