自業自得記録地獄

主にACミランとセリエAに関する備忘録。

21-22セリエA第8節 vs エラス・ヴェローナ(H) 不撓不屈

 IMWを挟み、離脱者が減ると思っていたら増えてしまったミラン。そして再び始まる7連戦。今節から観客動員が最大収容人数の上限50%から75%に増加。

 

 エラス・ヴェローナは開幕3連敗でディ・フランチェスコを解任し、4節からトゥードル(トゥドール)が監督に就任。トゥードル就任以降は毎試合複数得点で負けなし。失点も多かったが、前節スペツィア戦では今季初のクリーンシートを達成。

 2勝2分3敗15得点14失点で12位。今季アウェイ2分1敗。得点数4位タイ。失点数15位タイ。シュート数最少。CK数18位タイ。アクチュアルプレイングタイム17位。ポゼッションタイム17位。自陣19位。敵陣10位。

 イリッチが3アシストでリーグ2位タイ。カプラーリが2G2A。カリニッチはシュート6本で3得点と枠に2回当てている。走行距離がリーグ2位のバラクはシュートとキーパスもチームトップ。

 

 ミランは今季カンピオナートホーム全勝で失点も1のみ。エラスはお得意様。

 

アタランタ戦後の2週間

 テオがフランス代表で大活躍。ネーションズリーグ優勝に貢献。しかし、代表活動終了後に無症状だがCovid-19陽性反応で10日間の自宅隔離。

 ケアーがバロンドール候補にノミネート。

 メニャンがリヴァプール戦で痛めた左手首を検査すると、手首の靭帯損傷が発覚。再建手術は成功し復帰まで2ヶ月以上掛かりそう。

 昨季終了後にローマを退団し無所属になっていたミランテを今季限りの契約で緊急補強。

 ブラヒムも無症状だがCovid-19陽性反応。

 サレマが2026年6月まで契約延長。

 

先発&フォーメーション

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 ミランはイブラとクルニッチが復帰。違和感で代表を離脱したカラブリアとダニマルは問題なし。メシアスは太腿を痛めて再離脱。メニャン、テオ、ブラヒム、フロレンツィ、バカヨコ、プリッツァーリが欠場。ミランテはまだ招集外。

 エラス・ヴェローナダヴィドヴィツ、フラボッタ、ラグーザが招集外。

 

スタッツ&控え

Match Report | 2021-22 | 8ª Match Day | Lega Serie A

 

ハイライト


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流れ

 ミランのビルドアップはCBが開き、間にべナセルが降り、2列目が中央に集結し縦パスを引き出す。対してエラスはユリッチ時代同様にマンツーマンでプレッシング。ロマニョーリにカリニッチ、トモリにカプラーリ、べナセルにヴェローゾ、ケシエにバラク、ダニマルにイリッチ、SBにWB、レビッチにチェッケリーニ、サレマにカザーレ、ジルーにギュンターがマーク。

 エラスのビルドアップは後ろでは繋がずにカリニッチかバラクへのロングボールでこぼれ球を拾いミドルゾーンで保持かスペースへの速攻。

 2分、エラスが敵陣でFKを得る。ショートパスで繋いでいき、イリッチから受けたファラオーニがワンタッチでバラクにパス。バラクがキープしケシエの股を抜くパスで上がってきたイリッチへ。イリッチが左足を振り抜くがタタルシャヌがセーブ。

 

 チェッケリーニがレビッチへのファウルでイエローカードを貰ったのでカザーレとポジションチェンジ。

 6分、自陣深い位置でミランスローインを奪い、ラゾヴィッチが左サイドを運び、カリニッチがファラオーニへ展開。イリッチとヴェローゾでパス交換しファラオーニから中央のカリニッチへロブパス。べナセルがカリニッチの前でなんとか触ってこぼれたボールをヴェローゾが頭で前に押し出す。これが絶妙にトモリの頭を超えて背後のスペースに落ちると真っ先に反応したカプラーリがボレーシュート。タタルシャヌは触ったが弾ききれずゴールネットが揺れてエラスが先制。

 20分、自陣右サイドでバロ=トゥーレからレビッチへの横パスをカザーレがインターセプト。そのまま運びカリニッチを経由しカプラーリへ。PA角でカプラーリがトモリと対峙したところをラゾヴィッチがオーバーラップしパスを受けゴール前に折り返す。このボールにカリニッチとロマニョーリがもつれ、カリニッチが倒れてエラスにPKの判定。バラクが確実に決めてエラスが追加点。

 35分、孤軍奮闘していたレビッチが左足首を痛めてレオンに交代。

 0-2で前半終了。

 後半から怪我明けのクルニッチと構想外で実質今季初出場のサムカスを投入。べナセルは降りる頻度を減らし、クルニッチが中盤とジルーのリンクマンになり、右はサムカスが幅を取り、左はレオンとバロ=トゥーレのポジションチェンジが増える。

 50分、べナセルが粘ってキープしレオンへパス。レオンがジルーへ縦パス。レイオフを受けたクルニッチからオーバーラップしたバロ=トゥーレへ。クロスはレオンとサムカスに合わず。

 55分、タタルシャヌからジルーへのロングボール。エラス守備陣が弾き返せず後ろに流れたボールをレオンとクルニッチで繋ぎレオンがシュートを撃つがファラオーニがブロック。

 58分、右からのCKが流れてレオンが左サイドでイリッチとデュエル。イリッチを振り払いレオンがインスイングのクロスを入れると、ロマニョーリの後ろでギュンターとカザーレの間に飛び込んだジルーが頭で合わせてミランが1点を返す。

 67分、レオンがピッチ中央でボールロストしエラスのカウンター。ラゾヴィッチが大外に上がってきたシュタロとワンツーでハーフスペースを突破しクロス。タタルシャヌが触りファーに流れたボールをファラオーニがクロス。ケシエが頭で跳ね返したボールをバラクボレーシュートを撃つがサムカスがブロック。こぼれ球もサムカスが拾ってレオンへ繋ぎ逆カウンター。レオンからジルーへのパスはギュンターにカットされるがこぼれ球をサムカスが拾い再びレオンへ展開。レオンがコントロールシュートを撃つが僅かに枠を捉えられず。

 72分、ファラオーニからバラクへのパスをべナセルがインターセプトし、クルニッチから中央に入ってきたサムカスへパス。サムカスはワンタッチでレオンに縦パスを入れそのまま前へ行きレオンからヒールパスのリターンをPA内で受けるとファラオーニと接触し転倒。これがPKの判定。ケシエが決めて同点に。

 77分、ハーフウェイライン付近で受けたレオンから前線のイブラへ縦パス。イブラがスルーしジルーの横からシュタロが触ったボールをクルニッチが拾いサムカスへ。サムカスがクロスを入れるが明らかにミス。しかし、ギュンターのクリアミスがゴールネットを揺らしミランが逆転。

 80分、左からイリッチのアウトスイングのCK。ファーへのボールをファラオーニが繋いでバラクがシュートもタタルシャヌが弾き出す。

 91分、エラスのCKをロマニョーリがクリア。クリアボールを拾ったタメズがファーサイドへのクロス。ファラオーニがワンタッチで折り返しシメオネがヘディングシュートを撃つがタタルシャヌの正面。

 3-2で試合終了。

 

ミラン

 前半はエラスのタイトなマーキングとロングボールによる前進に苦戦。先に2失点を喫し、唯一打開の可能性を感じさせていたレビッチが負傷交代と散々だった。しかし、後半はビルドアップの立ち位置の整理とサムカスとクルニッチの投入でネガティブトランジションが改善。ジルーの得点で勢いも生まれ、見事に逆転勝利を果たした。

 開幕から8試合で勝ち点22は過去最高の成績。

 

 前半も後半もクリーンなビルドアップができたわけではない。ぴったりマンツーマンでついてくるのでフリーの選手を作れないぶん目立っていたのはタタルシャヌのロングボールで、そのままこぼれ球を拾ってミドルゾーンで保持できればべナセルやCBから配球という形は作れた。前半は背負ってる状態の2列目の選手に縦パスを入れるが受けた人が前を向けるか否かの勝負でレビッチしか上手くやれなかった。後半は1つ奥の選手に入れて前向きでサポートに入ったり追い越したりすることが増えた印象。決勝点のレオン、イブラ、ジルーのような、いわゆるスリーオンラインが随所に見られた。前半36分にもバロ=トゥーレ、ダニマル、ジルーという場面があり、バロ=トゥーレからダニマルを超えてジルーに入れて、ターンしたダニマルが落としを受けてサレマへのスルーパスが惜しくも繋がらなかった。試合通して左サイドの攻撃に偏っていたのはレビッチとレオンが打開策になっていたからなのか、左利きのべナセルが展開しやすかったからなのか。

 プレッシングの場面は蹴っ飛ばされるのでほぼなし。エラスはミドルゾーンで保持するとサイドの裏のスペースに起点を作り後ろから追い越してくる。CBがサイドまで釣り出されることはあっても、それがピンチになるような場面はほとんどなかった。

 失点はどちらもカウンターの流れ。ボールの失い方以外を語るなら、1点目はべナセルが頑張って触ったぶん中途半端なこぼれ球になってしまい隙を突かれてしまった。べナセルとトモリでカリニッチを挟んで奪うというのが理想的だったかもしれない。PKの場面はクロスをあげさせたくなかった。カプラーリがラゾヴィッチにパスを出す時のカラブリアとトモリのスイッチングがスムーズに行えれば。もしくは、トモリがカットインのコースを切り、選択肢を縦だけにしてカラブリアがドリブルにもラゾヴィッチにもカバーに入れるポジションを取っておくのが良かったかもしれない。

 総じてこの試合で重要だったのがトランジション局面。特に、エラスが攻めた後の、マークが完璧にハマっていない瞬間に何ができるか。2点目も3点目もボールを奪った後、縦に速く攻めた結果生まれた。

 いつだって重要なのがネガティブトランジション。前半は距離感が近すぎたり遠すぎたりでバランスが悪く、ボールの失い方も良くないので後手を踏んだが、後半はポジション修整でバランスを改善。加えてサムカスのハードワークが一人一人に伝播していっているようにも感じられ、中盤でボールを回収する場面が増えた気がする。2点目のきっかけはクルニッチがケシエのシュートをキャッチしたモンティポからファラオーニへのスローイングにすぐさまプレスをかけたことで、それにべナセルが連動した結果だ。今季のチームピオーリの仕事ぶりは凄い。

 

 サムカスはあっぱれ。構想外でも練習をしっかりやっていればチャンスを生かすことができるし、その姿勢が周りにも良い影響を与える。フロレンツィとメシアスの怪我がなければ出番は来なかったかもしれないが、ヒーローが生まれる瞬間は得てしてそういうものだ。ミランとカスティジェホは屈しない。

 べナセルは前半からビルドアップとデュエルで奮闘。後半は文句なしの働きで中盤を支配した。前半15分のヴェローゾをドリブルで剥がして全体のマークをズレさせて前進できた場面は良かったが、失えばタタルシャヌとの1vs1でリスクが大きすぎるので何度もできるプレーではなかった。

 レオンは全3得点に絡む大活躍。前で勝負するレビッチよりも下がって受けて剥がして展開を作るプレーがハマった。ポルト戦代表デビューもおめでとう。代表でも脱力プレーで笑った。

 クルニッチの復帰はやはり大きい。トップ下に入り、イブラ投入後はボランチに移り、トナーリ投入で元に戻る。アタッキングサードで決定的なプレーができれば最高。

 タタルシャヌはキックが悪くなかった。セービングもできる限りのことはした。

 ジルーは前半は死んでいたが、チームとともに後半は復活し、やはりワンタッチのゴールでサン・シーロを逆転ムードに持っていった。僅かな時間だったがイブラとの初共演もすぐに得点に繋がった。

 40歳でもイブラはイブラ。怪我明けの40歳とは思えないキレ。どれほどのトレーニングを積んでいるのか想像がつかない。感服いたします。

 サレマは動き回ったがミスが多く、ケシエは存在感が希薄。ダニマルとバロ=トゥーレは実力不足感。アンダーカテゴリーでテオのようなプレーを見せているケルケスを見たいというのは自然な欲求だろう。

 

 次は中2日でグループステージ突破のためには絶対に勝ちたいポルト戦。レビッチが負傷、ケシエは出場停止、サムカスは登録外と今節よりもさらに厳しい台所事情になる。

 

エラス・ヴェローナ

 カリニッチがサイドに流れて受けたり、カプラーリが右サイドまで流れて受けたりするのはダルかった。

 ユリッチの守備戦術を踏襲したが、失点も得点も多い。ユリッチはどちらも少なかった。何が違うのか。

 

主審 Alessandro Prontera VAR Aleandro Di Paolo

 主審はミラン初担当。カリニッチのはカリニッチが狡猾だった。後半のカザーレのハンド疑惑は不自然ではない位置にあった腕に向かって近くの味方から予測不可能なボールが飛んできたために避けようとして動かした腕に当たったので難しい。サムカスのは大した接触じゃないように見える。