自業自得記録地獄

主にACミランに関する備忘録。

19-20 ACミラン総括

 前代未聞のシーズンとなった19-20のミランを振り返ります。以下の赤字はリーグ戦のみの数字です。

 

 今季はCL出場に僅かに届かない5位で終わったガットゥーゾを解任し、エンポリサンプドリアで主体的なサッカーを行い評価を高めていたマルコ・ジャンパオロを招聘。テオ、べナセル、ラファエル・レオンら将来性豊かな選手も獲得し、中・長期的なビジョンを持ちつつCL出場を狙うシーズンが始まった。

 しかし、ジャンパオロのサッカーはプレシーズンから解任される第7節まで全く形にならなかった。7試合3勝4敗。6得点9失点。12位。結果、内容ともに解任されて然るべきだったが、幾らか不運な面もあった。

 一つは怪我や合流の遅れでフルメンバーがほとんど揃わなかったこと。プレシーズンからすでにブレイクの予感を感じさせていたテオ、エンポリ時代の教え子であるクルニッチが負傷、アフリカネーションズカップを戦っていたべナセル、コパ・アメリカを戦っていたパケタが遅れて合流。

 それ以上に大きかったのは、ジャンパオロが求めていたトレクアルティスタの補強が叶わなかったこと。アンヘル・コレアの獲得に動いていたが、最終的にミラノに到着したのはアタッカーのレビッチ。スソやカスティジェホをトップ下で試すが誰もハマらないうえに、昨季はフィニッシャーとして大活躍だったピョンテクと、2トップにボールに関与することを求めるジャンパオロのサッカーの相性は絶望的で、4-3-1-2を諦めざるを得ず4-3-3を採用していた。

 そんなこんなで4ヶ月経たずに解任されたジャンパオロの後任として今季限りの契約でやってきたのがステファノ・ピオーリ。就任直後から前政権時と比較すると躍動感のあるパフォーマンスを引き出したが結果には繋がらず、その後も今のミランの姿を想像するのは難しい内容の試合が続いていた。

 全てが動き出したのは2019年のラストゲームベルガモアタランタに0-5の惨敗を喫したことで神が決心した。

 「俺がミランを復活させる。」

 挑戦を好む神は、友達のミハイロヴィッチに誘われたボローニャや株主のハンマルビーではなく、愛するミランに復帰し、ミランにかつての栄光を取り戻す道を選んだ。ピオーリ就任からイブラ加入まで3勝3分4敗。10得点15失点。期間内獲得勝ち点10位。

 ピオーリ就任後も4-3-3を継続していたが2020年からはイブラとレオンが2トップを組む4-4-2を採用。そして、カルダーラとのトレードでやってきた経験豊富なCBケアーや前半戦は良いところ無しだったレビッチが活躍。更にダービーで採用したインテル対策の4-2-3-1がある程度機能したことから陣容が固まっていく。

 ピッチ上は改善の兆しがあったが、フロントは大揉め。CEOガジディスが独自に進めるラングニックとの交渉にチーフフットボールオフィサーのボバンが激怒し、勝手にメディアのインタビューを受けて解雇。

 そして3月、世界中で猛威を振るうCOVID-19の影響によりリーグは中断。トレーニングも出来ない、いつ再開できるのかもわからない前代未聞の中断期間に突入する。イブラ加入から中断まで4勝3分2敗。12得点10失点。期間内獲得勝ち点7位。

 シーズンが再開されたのは6月。コッパ・イタリアユヴェントス戦で再開。前半早々にレビッチが退場するも、ユヴェントスの攻撃をロマニョーリ、ケアー、ドンナルンマが凌ぎつつ、時折カウンターでゴールに迫る。結果的に敗退したものの、この戦いぶりが快進撃の始まりを予感させていた。

 イブラ不在で再開したがレビッチがワントップでも奮闘。攻守にハードワークを行っていたカスティジェホが負傷しても、中断期間中にイタリア語を勉強した勤勉なサーレマーケルスがその穴を補って余りある活躍を見せる。

 そして、今季のハイライトとなったのが第31節ユヴェントス戦。ローマ、ラツィオに完勝し、注目度が高まったなかで迎えた試合。後半にゴラッソとミスで0-2になったところで誰もがユヴェントスの勝利を確信したはずだが、終わってみれば4-2。連続性、スピード、バランス、精神力。ミランが完全に生まれ変わったことをイタリア、欧州、世界のサッカーファンに示した。

 その後も継続的な強さを発揮し、第35節サッスオーロ戦後にはラングニックの就任ではなくピオーリの契約延長が発表された。結果的に再開後第27節から最終節まで9勝3分0敗。35得点12失点。期間内獲得勝ち点1位。最終順位は6位。リーグで最も若いチームは当初の目標であったCL出場には遠く及ばず、ELストレートインにも届かなかったが、2019年の体たらくを考えると最高の形でシーズンを終えることができた。

 

 


 色々なチームスタッツを見たが特に気になるものはなかった。良くも悪くも尖った部分がない。

 

 


 それでは以上のデータと自らの記憶をもとに一人一人を振り返ります。

 

 GK

 #99 Gianluigi Donnarumma

 21歳で早くも公式戦200試合出場を達成した守護神ドンナルンマ弟。今季も神懸ったセーブを連発。5本のPKストップは異常。キック精度も向上中。終盤戦のロマニョーリ離脱後はカピターノとして出場。ただ、ライオラだるい。

 

 #90 Antonio Donnarumma

 昨季は出番がなかったが今季はコッパ・イタリアSPAL戦のみの出場。相変わらず安定したパフォーマンスで勝利に貢献。これで出場3試合全勝かつ無失点。弟のケア代含めて年俸€1Mは決して高くないのかもしれない。

 

 #25 Pepe Reina

 ジャンパオロのラストゲームとなったジェノア戦で先発。シェーネのPKをストップし勝利を引き寄せた。1月にアストンヴィラへ移籍。残留決定後のロッカールームでの暴れっぷりは流石。退団濃厚。

 

 #1 Asmir Begovic

 レイナ移籍に伴いボーンマスから借りてきたベテラン。負傷したドンナルンマと交代で出場したフィオレンティーナ戦と次戦のジェノア戦で先発。どちらも勝てなかったが悪い出来ではなかった。ムードメーカーのレイナとは対照的な真面目な性格から周囲の信頼は厚い様子。

 

 CB 

 #13 Alessio Romagnoli

 35節の負傷交代までフル稼働だったカピターノ。FPではチーム最長の出場時間。ケアーとコンビを組み始めてから安定。経験を積めば積むほど成長するタイプのCBだと思うので、まだ25歳というのはポジティブ。

 

 #22 Mateo Musacchio

 前半戦は主力としてプレーしたがケアー加入後は2試合のみの出場に留まる。再開後は足首の怪我で全休。3季目だが加入後ワーストシーズン。リアクションの遅さ、ベターではない判断が気になった。怪我がなければ放出要員だった。

 

 #43 Léo Duarte

 新加入だがほぼ負傷離脱の1年になってしまい、4試合に先発したが実力が分からない。チームで唯一のスピードに長けたタイプのCBだと思われるので期待はしたい。

 

 #46 Matteo Gabbia

 今季セリエAデビューを飾ったプリマヴェーラ出身の20歳。ライバルの怪我もありCBの3番手の座を掴んだ。メンバー外になったのは1度だけ。経験を積ませるためにセリエAの中位・下位にレンタルさせるかは悩ましい。

 

 #33 Mattia Caldara

 期待されたが怪我が続き、加入1年半でコッパ・イタリア1試合とEL1試合のみの出場。大きく価値を落としたが、1月に地元ベルガモに復帰すると何事もなかったかのように試合に出続けた。ケアーとのトレードはWin-Winになったがどこか納得いかない。

 

 #24 Simon Kjaer

 アタランタに馴染めなかったデンマーク人CBは、1月にカルダーラとのトレードで加入すると、すぐにロマニョーリのパートナーとして定位置を掴む。ハイボールの弾き返し、身体を張ったブロック、高精度のロングフィード、リーダーシップで出場時は1敗しかしなかった。

 

RSB

 #2 Davide Calabria

 プリマヴェーラ生え抜き。守備対応が改善されず、コンティとの競争に敗れかけていたが、終盤戦では持ち前の攻撃参加でアピールも、キャピタルゲインを得るために放出濃厚。

 

 #12 Andrea Conti

 2年間大怪我とコンディション調整に苦しんだが、ピオーリ就任後からレギュラーを獲得。アタランタ時代の攻撃的なWBからバランス重視のSBに変身。ただ、ここから進化する未来が想像しにくい。

 

LSB

 #19 Theo Hernández

 今季のMVP。圧倒的なスピードと当たり負けしないフィジカルで幾度もゴールに迫った左の槍。課題だったクロス対応も改善されつつある。もし、彼が獲得できていなかったらと考えるとゾッとする。2回の出場停止がどちらもアタランタ戦だったのは痛かった。

 

 #68 Ricardo Rodríguez

 テオの控えとして残留したが、何もできず1月にPSVへ。彼が最も輝いたのは加入初年度のプレシーズンかもしれない。ドイツ時代の評判は完全に消え去った。退団濃厚。

 

 #93 Diego Laxalt

 リカルド・ロドリゲスの後釜として加入目前だったアントニー・ロビンソンのメディカルチェックで問題が見つかったことにより、ベンチ要員だったトリノから呼び戻された。怪我無く常に起用可能だった。出場停止のテオに代わって先発したアタランタ戦は評価に値。

 

DM

 #79 Franck Kessié

 今季も怪我無くほぼフル稼働。過去の監督は彼をインサイドハーフに置き上下に走らせたが、ピオーリは彼を攻守のバランサーとして司令塔のべナセルとダブルボランチを組ませた。再開後のパフォーマンスは過去最高で中盤を完全制圧。過去2年に比べ警告数も半分に減少。平均走行距離チームトップ。まだ23歳。

 

 #20 Lucas Biglia

 今季も怪我に苦しみ、過去最少の出場時間。輝いていたラツィオ時代の監督であるピオーリの就任が良い影響を与えるかと思われたが何も起こらなかった。退団濃厚。

 

 #4 Ismaël Bennacer

 アフリカネーションズカップでMVPを受賞して加入。ピルロ以来のDFラインの前で捌ける選手でありながら、ガットゥーゾデ・ヨングのようなファイターでもあり、警告数はリーグトップタイの14枚(再開後は2枚のみ)。怪我がなく走行距離はチーム2位。ケシエとのコンビはバイエルンのキミッヒ&ゴレツカに比肩するポテンシャルを感じさせる。

 

 #33 Rade Krunic

 べナセルとともにエンポリから加入。ジャンパオロの教え子として重要な存在になるかと思われたが、プレシーズンから怪我を抱えて出遅れ。結局ジャンパオロ期は1試合のみの出場。技術とフィジカルを併せ持った選手としてピオーリからはそこそこの信頼を得ていたように思うが、怪我もあり出場時間は伸ばせず。トリノの監督に就任したジャンパオロが欲しがっているらしい。

 

 #94 Marco Brescianini

 プリマヴェーラのカピターノ。21試合でベンチ入りし最終節でセリエAデビュー。大型左利きCMというのがペッシーナと被る。

 

OM

 #10 Hakan Calhanoglu

 ピオーリ就任後から調子を上げ、再開後に覚醒。イブラヒモヴィッチとともに攻撃を彩った。守備でもハードワークしながらチーム2位の11G、チームトップの9アシスト。FKも決まり来季は更に良い結果が期待できそう。

 

 #5 Giacomo Bonaventura

 昨季の大怪我から復帰し中盤、2列目のマルチロールとして貢献。ピオーリ就任後に出場機会がなかったのは5試合のみ。終盤戦に6アシスト。30試合以上出場した選手のなかでは最高のPPG(Point Per Game)1.94。今季限りで契約満了で退団。暗黒期ミランを支えた献身に感謝。

 

 #39 Lucas Paquetá

 昨季は期待を持てるプレーぶりだったが今季は低調。1月には精神が不安定でメンバー外にもなった。昨季オフにコパ・アメリカに参加したことでイタリアに来てからゆっくりできていないのかと思ったが、中断期間を経てもあまり変わらず。現在はトレード要員になりかけている。

 

RWG

 #7 Samu Castillejo

 開幕戦は2トップ、2節はトップ下で先発。その後は4-3-3採用でスソの控えに。風向きが変わったのは19節。スソにはないハードワークで勝利に貢献し信頼を掴んだ。来季は数字にも拘ってほしい。筋肉系の怪我が多いのが不安。

 

 #8 Suso

 ジャンパオロに託されたトレクアルティスタに適応できず。得意の位置に戻っても数字を残せず。やる気のなさそうなプレーにティフォージも不満が爆発した。結局ボナベントゥーラと同期で暗黒期ミランのエースは1月にセビージャへ移籍。数えきれない程の罵詈雑言も浴びたはずだが今でもミランについて好意的に話しているいい人。インテルに勝ってEL優勝してほしい。

 

 #11 Fabio Borini

 開幕戦にまさかのRCMとして先発。以降は出番なく1月に契約解除してエラス・ヴェローナへ移籍。ユヴェントス戦では元ミランパッツィーニと大金星の立役者に。

 

 #56 Alexis Saelemaekers

 1月にアンデルレヒトからレンタルで加入。中断期間にイタリア語を勉強すると再開後は重要戦力に。その勤勉な性格と安価な買取金額を理由に買取オプションを行使。カスティジェホ負傷の穴を感じさせない献身性とオフ・ザ・ボールの動きで貢献。来季のポジション争いは注目。

 

LWG

 #18 Ante Rebic

 夏市場最終日にアンドレ・シウヴァとのトレードで獲得。前半戦は体が重く出場機会が増えなかったが、2020年は出場停止だった最終節以外全試合に出場しチームトップの12G。ウディネーゼ戦の2発からはアンストッパブルだった。イブラヒモヴィッチ加入で最も恩恵を受けたが、イブラ不在時に代わりを務めたCFでも結果を残した。

 

 #17 Rafael Leão

 唯一全試合メンバー入りしたポテンシャルの塊。あの身体能力で怪我しないのは凄いと思う。オフ・ザ・ボールのアクションの質と量、攻守の切り替えが改善されればおもしろい。完敗だったフィオレンティーナ戦のゴールがミランのシーズンベストゴールに選ばれた。

 

 #98 Daniel Maldini

 3世代に渡ってのセリエA出場を果たしたパオロの次男。本職はOMらしいがWGで起用されている。プレシーズンから良さがわからない。

 

CF

 #9 Krzysztof Piatek

 昨季のエースは9番の呪いに飲み込まれた。フィニッシュ特化のスタイルはジャンパオロだけでなく、ピオーリとも合わず。イブラヒモヴィッチが加入するまでは他にCFがいないので全試合に出場したが成長できず1月にヘルタ・ベルリンへ完全移籍。まさか1年でいなくなるとは。

 

 #27 André Silva

 2節に2トップの一角として先発。個人的には当時の選手たちのなかでは最もジャンパオロのサッカーにハマりそうな感触があったが、その後すぐにレビッチとトレード。再開後のブンデスで好調で結果的に良いトレードになった。

 

 #21 Zlatan Ibrahimovic

 並外れた技術、フィジカル、メンタリティで若きミランを導いた神。決定的な場面でのミスも目立ったが、それでも半年でシーズン2桁得点の最年長記録を更新。38歳だがエアバトルは昔より強くなっているようにすら感じる。ただ、ライオラだるい。

 

 #29 Lorenzo Colombo

 プリマヴェーラのエース。イタリアU-19代表の18歳。ボローニャ戦でセリエAデビュー。まだよくわからないが体格は良い。プリマヴェーラでは2部だが点を取りまくっている。

 

監督

 Marco Giampaolo

 大失敗だったがそもそもフィットする選手がいなかったのも事実でかわいそうでもある。来季のトリノではベロッティ、ザザ、ヴェルディで2トップ、トップ下がやれそうだし、ルキッチがブレイクチャンスで面白そう。

 

 Stefano Pioli

 就任当初はガットゥーゾ期から続く4-3-3を踏襲しつつ、保持時は3-4-2-1へ可変させたり、ジャンパオロ期に足りなかったオフ・ザ・ボールの動きを増加させた。しかし、良い結果は出せず。ウインターブレイク明けの2020年から4-4-2、4-2-3-1のダブルボランチシステムに変更。新加入のイブラヒモヴィッチ、ケアーのベテラン北欧巨人たちが攻守の軸に収まり安定感が生まれ始めた。チームトレーニングができない中断期間は選手の自主性を信頼して特別なことはしなかった。再開後の強さは言わずもがな。気難しそうなイブラヒモヴィッチとの関係も良好。

 個人的に最も評価したいのはケシエをバランサーとして起用している点。無尽蔵のスタミナと屈強なフィジカルを縦ではなく中盤全域で生かすアイデアミラン、ケシエ双方にとって良い方に転がっている。

 今後インテル時代の急失速のようなことが起きるかもしれない不安はないわけではないが、後ろは安定しているし、イブラヒモヴィッチ、レビッチ、レオン、テオのタレントパワーでも殴れるようになっているので大崩れすることはないはず。来季もよろしくお願いします。名将になろう。

 

 以上。

 今季終盤の好調は過密日程で相手が対策を練る時間がなかったことも影響しているはず。来季は完全にマークされるしELに予備予選から参加しなくてはいけない。現状では選手層も厚いとは言えず、FFPに対応しながらRSB、DMらの補強、イブラヒモヴィッチ、ドンナルンマ弟、チャルハノールとの契約延長が急務。ただ、フロント陣がこれらのミッションをこなせれば、CL出場権獲得は十分実現可能。来季逃すとまた時間が掛かりそうな気がする。

                                       Forza Milan!!