21-22セリエA第35節 vs フィオレンティーナ(H) 高まる期待
残り4試合。ミッドウィークに延期分の試合を戦ったインテルが敗れたことでミランが正真正銘の首位になった状態で迎える一戦。満員のサン・シーロに5連戦中のフィオレンティーナを迎える。
フィオレンティーナは17勝5分12敗で7位。ヴラホヴィッチ移籍後の得点力不足は顕著で、13試合で14得点、複数得点を奪ったのが2試合だけ。それでも後半戦はロースコアのゲームをしぶとくモノにしてきて一時は4位も狙える状況だったが、ここにきて下位相手に2連敗を喫し、4チームによる熾烈な5位争いに身を置いている。引き分け数リーグ最少。
以下の順位はすべて暫定。
- 今季アウェイゲーム6勝3分8敗、20得点26失点。アウェイだけの順位が10位なのに対して、ホームは2位。
- 54得点はリーグ9位。ヴラホヴィッチが1/3に当たる17点。セットプレーから6点、FKが4点、PKが6点。前半序盤の得点が少なく、30-75分で全体の66%を占める。
- チームトップスコアラーはトレイラで5点。ニコラス・ゴンサレスとビラーギが4点、サポナーラ、ボナベントゥーラ、ピョンテク、ソッティルが3点。他は2点が2人、1点が8人。スコアラーは全部で17人。
- ニコラス・ゴンサレスがリーグ11位タイの6アシスト。サポナーラとボナベントゥーラが3アシスト。
- シュート数8位。枠内シュート数4位。ニコラス・ゴンサレスが24位タイの61本。ボナベントゥーラ、ビラーギ、サポナーラが続く。
- 枠に当てた回数7回。
- 46失点は8位。無失点は9試合。前半45分間が16失点に対して、75-90分の間に15失点。
- 枠に助けられた回数11回。
- 1試合平均リカバリー数19位。ミレンコヴィッチが8位。
- セーブ数19位。
- ドリブル数15位。
- クロス成功数2位。失敗数3位(多)。
- CK数5位タイ。
- オフサイド数15位タイ。
- PK獲得数9回でリーグ3位。献上回数5回。
- イエローカード数17位(少)。レッドカード数8枚で最多タイ。
- 1試合平均走行距離19位。105.1㎞。個人ではミリンコヴィッチ=サヴィッチがリーグ2位。
- アクチュアルプレイングタイム6位。
- ポゼッションタイム2位。自陣1位。敵陣9位。
- パス成功数5位。キーパス数8位。ファイナルサードのパス数7位。
- キーパス数リーグ4位タイに62本のビラーギ。
- 被ファウル数87回でニコラス・ゴンサレスがリーグトップ。
- 11-12シーズン以降のセリエAでの対戦成績はミランの7勝6分8敗。同期間内ではナポリ、インテル、ユヴェントスに次いで勝率が低い。サン・シーロでも4勝1分5敗で分が悪い。
ラツィオ戦後の1週間
特になし。
先発&フォーメーション
ミランはべナセルが復帰。フロレンツィ、ケアー、ダニエル・マルディーニが負傷欠場。ラゼティッチが招集外。トモリ、カルル、ブラヒム、ロマニョーリは累積リーチ。
フィオレンティーナはカストロヴィッリ、オドリオソラが負傷欠場。
スタッツ&控え
Match Report | 2021-22 | 35ª Match Day | Lega Serie A
ハイライト
流れ
ミランのビルドアップはテオを高い位置に上げて、カラブリア残しの3バックを形成。基本的にはボランチの片方がアンカー、もう一人とブラヒムがインサイドハーフのイメージで、レオンはジルーと2トップ気味。フィオレンティーナは4-5-1でセットしてからプレス時はマレーが前に出る4-4-2に切り替え。2トップがライン間への楔を消し、SBにWG、トナーリにアムラバト、ケシエにダンカンがインターセプトの狙いを定める。人への意識が強め。ミランはメニャンからのロングボールでDFラインを押し下げようとしたり、サイドにインサイドハーフが流れて数的優位を作ったり、フィオレンティーナのダブルボランチを釣り出してライン間への縦パスなどで前進を図る。
フィオレンティーナのビルドアップは1-2-3-2-3。アムラバトとダンカンを中心にボールを動かし、イゴールは積極的にボールを受けられる位置に顔を出す。逆ボールサイドはWGか高い位置を取ったSBは幅を取り、サイドチェンジの受け手、クロスの出し手になる。ミランはジルーがイゴールへのパスを狙い、レオンがヴェヌーティを消しながらミレンコヴィッチへのパスを狙う。ヴェヌーティに通されると、ケシエがダンカンからスライドし、ダンカンにはトモリが出ていく。降りて縦パスを受けようとするカブラウにはカルルが付いていき、CBが空けた中央の裏を狙うマレーにはトナーリがマンツーマンで対応する。
0分、右サイドでミランがボールを奪うが、カラブリアとジルーのパス交換をアムラバトが奪い返す。サポナーラが左サイドを運び、マレーがファーサイドにふんわりクロス。ニコラス・ゴンサレスの落としをカブラウがオーバーヘッドで合わせるがトモリがブロック。
5分、カラブリアからジルーへ縦パス。右に開いたブラヒムにワンタッチで落とし、ブラヒムが外から内に入ってビラーギの背後を抜け出したメシアスにスルーパス。メシアスがPA内に持ち込みブラヒムにバックパス。ブラヒムのシュートがDFに当たったこぼれ球をテオが拾い、中央にズラして右足でシュートを撃ち、ネットを揺らすものの、ブラヒムからメシアスへのパスがオフサイド。
9分、フィオレンティーナがプレス回避とダンカンのサイドチェンジでCKを得る。ビラーギのアウトスイングのボールが中央の山を越えてフリーのイゴールの足元に収まり、イゴールが左足でシュートを撃つが僅かに枠の右に外れる。
11分、左サイドに降りたレオンがトモリからパスを受けると一気に縦に持ち出してニコラス・ゴンサレスを剥がし、PA内のブラヒムにパス。イゴールがカットしたボールがテオにこぼれるが、テオのシュートは枠を捉えられない。
15分、ニコラス・ゴンサレスからカブラウへのパスをトナーリがインターセプトし、運んで左のレオンにパス。レオンが3人を引き付けて中央のケシエにパス。イゴールの背後から中央に抜け出したジルーにケシエからスルーパスが通り、ジルーが左足でシュートを撃つが枠の右に外れる。
20分、中盤に降りてトモリからパスを受けたレオンがカルルにバックパスを出すが、緩くなったパスをダンカンが奪う。ダンカンは左サイドを上がってくるサポナーラに展開。サポナーラがPA内に持ち込みシュートを撃つがメニャンがセーブ。こぼれ球もケシエが身体を入れてダンカンからブロック。
21分、トモリのワンタッチパスが高く浮くが、ダンカンが競ったこぼれ球をテオが拾う。テオはケシエに預けて、レオンと入れ替わりで中央に入っていくと、トナーリからテオに縦パスが通る。テオがターンしてヴェヌーティと交錯したボールがブラヒムに繋がり、ブラヒムがケシエにラストパスを出すが精度を欠き、テラッチャーノが抑える。
23分、フィオレンティーナが左サイドからのスローイン。サポナーラが深い位置でカラブリアを背負って受け、トナーリの背後を取ったマレーにパス。マレーのマイナスの折り返しにニコラス・ゴンサレスが合わせるがテオがブロック。
32分、テラッチャーノからヴェヌーティとのポジションチェンジで右サイドに開いたダンカンへのパスをテオがインターセプト。そのまま運びゴール前に折り返すがテラッチャーノが弾く。こぼれ球をケシエがミドルシュートを撃つが大きく枠を外れる。
1-0で前半終了。
46分、ジルーへロングボールを入れるが、落としをマレーが拾ってすぐにサポナーラへパス。サポナーラがカラブリアをかわしてゴール前に入ってくるマレーに折り返すがトナーリがインターセプト。トナーリが最前線のレオンにロングボールを蹴る。ミレンコヴィッチが弾き返したボールをブラヒムが拾い、PA手前まで運び右のジルーにパス。ジルーがワンタッチで折り返すと、左から入ってきたレオンがクアルタをかわしてシュートを撃つが滑って枠を大きく外す。
50分、ミランが左サイドからFK。クリアボールをカラブリアがジルーに繋ぎ、ジルーがシュート。ブロックされたボールを態勢を崩しながら前方のスペースに落とす。それにケシエが走り込みシュートを撃つがテラッチャーノが足でセーブ。
52分、センターサークルでカラブリアからパスを受けたトナーリがダンカンをかわして運び、ニコラス・ゴンサレスの背後を突いたテオにスルーパス。テオがゴール方向に持ち出してシュートを撃つが枠の上に外れる。
55分、ミランは2列目を右からレオン、クルニッチ、レビッチに変更。保持時はケシエが降りて3-1-5-1。プレスはレオンが左でやっていたことを右で行う。
59分、メニャンからのロングボールをジルーとミレンコヴィッチが競り、触れずに流れたボールをレビッチがダイレクトボレーシュートを撃つが枠の左に外れる。
70分、メニャンからパスを受けたトナーリがアムラバトのプレスをかわしてクルニッチにパス。大外から裏を狙うテオにクルニッチからスルーパス。テオの折り返しにレビッチが合わせるがゴール前でイゴールがブロック。
75分、ロングボールの処理を誤り、苦し紛れにカルルがクリアしたボールをアムラバトが回収。ボナベントゥーラが左サイドでカラブリアをかわしてビラーギにパス。ビラーギのクロスをテオの前に入ったカブラウが頭で合わせるがメニャンがスーパーセーブ。
77分、ミランはレオンとレビッチの位置を入れ替える。レビッチがイゴールにプレス。
78分、べナセルが入り、トナーリが降りる役に。
81分、イゴールからテラッチャーノへのバックパスにイブラが寄せる。テラッチャーノからクアルタへのパスをレオンが奪い、そのままPA内に持ち込んでシュートを撃つとテラッチャーノの逆を突いてゴールネットを揺らしミランが先制。
88分、ハーフウェーラインでイコネから横パスを受けたミレンコヴィッチが滑ってレオンがボールを掻っ攫う。レオンがそのまま運んでいき、緩急でイコネをかわそうとするがイコネが読んで身体を当てて奪う。
1-0で試合終了。
ミラン
序盤からプレスもビルドアップも悪くない手応えを掴んでいたが、常に悩まされているアタッキングサードのクオリティ不足をこの試合も露呈。後半も決め切れない展開のなか、あわや失点の大ピンチをメニャンが超反応で防ぐ。そして、前節同様レビッチとイブラのプレスからミスを誘い、最後はレオンが決める。その後も集中を切らさず、強度を落とさずに戦い、満員のサン・シーロで勝利を掴んだ。
ハイラインにはロングボールで押し下げ、ボランチの立ち位置で中央のパスコースを創出しライン間への縦パス。プレスに対して、ビルドアップで穴を突く狙いがあったのが良かった。フィオレンティーナのプレス強度が想定よりも高くなかったという点はあれど、冷静に立ち位置を取り、パスを通すことができた。
12分のビルドアップはケシエがアンカーの位置から右に降りて、カラブリアが上がり、メシアスが中央といった具合でかなり流動性が高かった。34分のカラブリア、ブラヒム、トナーリ、レオンの繋がりもスムーズで良かった。トナーリがアムラバトを釣ると同時にブラヒムへのパスコースを創出したのが見事。レオンが前を向いて仕掛けられればチャンスになったはず。
単純な決定機だけでも多かったが、より精度の高いプレーをすれば決定機になった場面も多かった。特にブラヒムはパスが全くコントロールできていなかった。5分のテオが決めてオフサイドになった場面はブラヒムがパスを受けた時点でメシアスの動きを確認できていればオンサイドでパスを出せる時間はあった。
ブラヒムせっかくボールを受けられているのに…
— インクルソーレ (@milan2733) 2022年5月1日
ハイプレスはレオンがヴェヌーティを消しきれないことも見越した強気なスライドを用意してきた。その点でケシエ、トナーリ、トモリ、カルルの働きは素晴らしかった。特にケシエのヴェヌーティへの寄せはほとんど時間を与えることがなかった。ミランの守備を機能させるためには予測能力と高いアスリート能力が必須であることを改めて感じた。
怖かったのはレオンが右に回った20分間。レオンは攻め残りするのでビラーギがフリーでボールを持ったり、サイドで数的同数、不利で対応しなければならない場面が何度かあった。攻め残りのメリットも享受できていなかったので、左に戻してクアルタがフリーになる方が怖さはなかった。
復調したレビッチの途中投入がチームにエネルギーを与え、スペースへのランニング、プレス、プレスバックを高い強度で行い、相手にストレスを与える。
クルニッチの戦術遂行能力、ポリバレント性、一定水準以上の技術とフィジカルは本当に頼りになる。
イブラはボールタッチは少なかったが、守備での貢献が目立つ。テラッチャーノはそれほどプレッシャーを感じる必要はなかったように見える寄せの距離と速度だったが、見えない圧があるのだろうか。もう一点、88分のレオンが倒れたあと、レビッチが左にプレスをかけに行ったのを見て右に戻ってパスカットした場面は隠れたファインプレー。もし戻っていなければ数的不利でゴールに迫られていた可能性が高い。
次は日曜日にアウェイのエラス・ヴェローナ戦。簡単な相手ではないが、今節のような気概、強度、集中力を発揮できれば必ず結果は付いてくるだろう。
フィオレンティーナ
コッパ・イタリアと延期試合が組み込まれた5連戦を4連敗で終える。
右サイドバックはヴェヌーティだと攻守とも中途半端、オドリオソラは攻撃意識は高いが守備が軽い。今は得点力不足なのでまだ守れるヴェヌーティの先発が多くなっているのか。怪我がなければ撃ち合い上等でオドリオソラで来た方が嫌だったかもしれない。
ボナベン、ピョンテク、サポナーラに恩返し弾を食らわなくてよかった。
ダンカンとビラーギにインテルサポート弾を食らわなくてよかった。
主審 Paolo Valeri VAR Massimiliano Irrati
やはり試合裁きの安定感がないという印象だが、マレーに2枚目のイエローカードを出す必要はなかったと思うのでそこは良いジャッジだったと思う。個人的にはテオのトレイラに対する肘打ちの方が印象が悪い。VARが介入するほどではなかったが、テオは気を付けてほしい。