22-23 ACミラン総括
19-20シーズンにマルディーニ、マッサーラ、モンカダが見出した良質な種がピオーリとイブラによって蒔かれると、時間をかけて着実に根を張り、幹は太く成長し、並木道の先頭と最後尾にフランス産の大木を植えた21-22シーズンはインテル、ナポリとのデッドヒートを制して11シーズンぶりのスクデットを獲得した。
今季はオーナーがエリオットからレッドバードに変わり、注力してきた営業面だけではなく競技面での収入も増加したが、限られた予算内で将来有望な選手とスカッドに厚みをもたらせる選手を獲得する補強方針は変わらず。高年俸のケシエとロマニョーリのフリーでの退団以外に主力の放出はなく、ローンバックのポベガとアドリ、ブンデスリーガからチャウとヴランクス、フロレンツィの負傷で緊急補強したデストと、フリーのオリギ以外は若くコストも抑えた補強をするなかで、補強の目玉として長期間の交渉の末に約3200万ユーロを掛けて獲得したベルギーの若き至宝デ・ケテラーレに期待が寄せられた。
今季の変遷
8・9月
開幕戦は開始早々に先制点を与えるが、PSMから取り組んでいた右サイドの崩しが機能し、昨季は勝てなかったウディネーゼに逆転勝利を収める良いスタートを切った。1週間後のアウェイアタランタ戦はアタランタに攻守ともに苦戦したが、ベナセルの個人技で勝ち点1を持ち帰った。3節のボローニャ戦から7連戦が始まり、初戦はショートカウンターで得点を重ね、今季初の無失点にデ・ケテラーレの初先発&初アシストで快勝。中2日のアウェイサッスオーロ戦はケアーの復帰後初先発などターンオーバーを実行するが、連係、精度ともに不足する場面が目立ち、メニャンのPKストップに助けられてスコアレスドロー。フロレンツィが前半戦全休の怪我を負うが、中3日のミラノダービーでは先制されても怒涛の猛攻で3点を奪い、終盤はメニャンの活躍と5バックで逃げ切る。
今季のCL初戦となった中2日のアウェイザルツブルク戦はターンオーバーをせずに臨み、先制されても追いついたがなんとも言えない試合内容で引き分け。中3日のアウェイサンプドリア戦は速攻で先制するが、後半開始早々にレオンが退場し追いつかれる。それでも、5バックへの変更とジルーのハードワークで勝ち越し勝利。中3日のディナモ・ザグレブ戦は引いた相手を押し込んでPA内を攻略することに成功し、サレマのCL2戦連発にポベガのミラン初得点でグループ首位に浮上。7連戦の最後、中2日のナポリ戦は序盤戦の王者を決める大一番になったが、決定機を逃し、少ない決定機を決められ、良い内容とは裏腹に今季公式戦初黒星をつけられた。1月のスペツィア戦以来のセリエAでの敗戦となった。
持たされる展開にさせられたり、レオンの背後を狙われたり、ポストプレーからの失点が続いたこの期間は9試合で10失点。5試合で先制点を許しながら1敗しかしなかったメンタリティは素晴らしいが、先制した試合は全勝しているのも事実。レビッチとオリギのコンディション不良でレオンとジルーは先発を続けるしかなかったが状態は良好。クルニッチの離脱で負担が増したベナセルとトナーリはポベガと3人でなんとかやり繰りをした一方、ほぼフル稼働のテオはナポリ戦にフル出場したがフランス代表の検査で負傷が発覚してしまった。新加入組はデ・ケテラーレとポベガ以外は先発出場がなかった。
ワールドカップ中断前(10・11月)
9月のインターナショナルマッチウィークを経てレビッチが復帰したが、守護神のメニャンがフランス代表でふくらはぎを負傷し5連戦を欠場する。5連戦の始まりはエンポリ戦だったが負傷の連鎖は止まらず、前半のうちにサレマとカラブリアが前半戦終了の怪我を負ってしまう。後半ATに直接FKで追いつかれる苦しい試合展開だったが、直後にテオに替わって先発したバロ=トゥーレのプロ初ゴールで勝利を掴んだ。中3日のアウェイチェルシー戦は主力級8人を負傷で欠いて完敗しグループ3位に転落する。中2日のユヴェントス戦でテオが復帰し、ブラヒムをRWG、カルルをRSB、ガッビアをCBに起用すると、4−5−1で持たせてカウンタープランへの試合中の修整がハマり、サッスオーロ戦以来の無失点で完勝を収める。しかし、良い流れは続かず、中2日のチェルシーとのリターンマッチでは16分でトモリが退場してプランが狂い、立て続けに2失点を喫して敗北。中4日のエラス・ヴェローナ戦はマンツーマンプレスに苦しんだがカウンターで奪った2点をデビュー戦のチャウが守りきり、5連戦はCL2連敗、セリエA3連勝と対照的な結果で終えた。
中5日のモンツァ戦からはワールドカップ中断まで7連戦。モンツァ戦はピンチも少なくなかったが、タタルシャヌ、ブラヒム、メシアスが活躍し、オリギの加入後初ゴールなどで4発快勝。中2日のアウェイディナモ・ザグレブ戦は相手のアタッキングサードでの質にも助けられて、ガッビアのダイビングヘッドを皮切りに2戦連続で4得点を奪う。ターンオーバーも機能させて迎えた中4日のアウェイトリノ戦はピンチこそ少なかったものの、マンツーマンに苦しみ、セットプレーとロングボールで立て続けに失点を許し、4連勝中だったセリエAではナポリ戦以来の今季2敗目を喫する。引き分け以上でグループステージ突破が決まる中2日のザルツブルク戦はビッグマッチに強いジルーが2G2Aの大活躍で13−14シーズン以来となるCL決勝トーナメント進出に導いた。
中2日のスペツィア戦は多くの決定機を作りながらドロンゴフスキの好セーブや運にも見放されるスペツィア戦らしい展開で、ローン中のダニエル・マルディーニに決められる難しい試合になったがジルーのスーパージャンピングボレーで終盤に勝ち越し。中2日3連戦の3試合目となったクレモネーゼ戦はテオとジルーの出場停止の影響は小さくなく攻撃の迫力を欠き、僅かな決定機はカルネセッキの好セーブに遭いスコアレスドローに終わった。中4日のフィオレンティーナ戦は1分で先制したが、その後はビルドアップ、プレッシング、トランジションの全局面で後手を踏み、負けても不思議ではない内容だったが、90分に相手のミスによる幸運のオウンゴールが決まり、勝利で2022年を締めくくった。
守護神メニャンの欠場と右サイドの人材不足により、やり繰りが難しいなか、チェルシーには完敗を喫したがグループステージを突破し、セリエAでも絶好調の首位ナポリと8ポイント差とはいえ2位に着けているのはポジティブに捉えられる。ザルツブルク戦以降、ビルドアップだけでなく、非保持でも相手に合わせる3バックが増加。8・9月は出番が少なかったガッビアや負傷が癒えたオリギとレビッチ、新加入組のデスト、チャウ、ヴランクスは徐々に出場機会を増やしたがレギュラー組に割って入るような活躍をしていたとは言い難く、デ・ケテラーレは消極的なままで、アドリは先発のチャンスを活かせなかった。
3ヶ月間で21試合の過密日程、主力の長期離脱、期待の新戦力が苦戦、相手の対策も進み、苦しい試合が多かったなかでも昨季より2ポイント少ないだけという悪くない成績で前半戦を終えた。
ワールドカップ中断明け(1月)
ワールドカップには7人が参戦し、フランス代表ではテオとジルーが活躍したが惜しくも準優勝に終わってミラノに帰還。中断中のトレーニングマッチではアーセナル、リヴァプール、PSVに3連敗し、負傷者も減らず、逆転スクデットへの不安が募る内容と結果を受けてピオーリはPSV戦後にオフを返上してトレーニングを組んで再開に備える。
5連戦の初戦はサレルニターナ相手に多くのチャンスを作り、開始15分で2点を奪う。その後はオチョアの壁に阻まれ、後半は強度が落ちて1点を返されるがまずまずの成果を得てナポリとの勝ち点差が5に縮まる。続くローマ戦も高強度のプレーと落ち着いたビルドアップで2点目を奪うまでは完璧な試合だったが、84分の5バックへの変更後にセットプレーから2失点を喫して勝ち点2を失うと、中2日で迎えたコッパ・イタリアのトリノ戦は相手に退場者が出た影響もあり、シュート32本を撃つが空砲に終わり、延長戦にカウンターから被弾して敗退。中2日のレッチェ戦は悪い流れを引きずって開始2分で失点するなど前半で2点のビハインドを負う。なんとか後半に2点を取り返すが逆転には至らず、逆転スクデットへ暗雲が立ち込め始める。
ターニングポイントとして臨んだインテルとのスーペルコッパ・イタリアーナでは気合だけでは解決できない根本的な問題が露わになる惨敗でタイトル獲得のチャンスを2週連続で潰す。連戦が終わり、中5日のラツィオ戦でも開始3分で失点し、3試合連続で前半に2失点。全く歯が立たずに0-4の大敗を喫すると、中4日で迎えたサッスオーロとの絶不調対決ではカウンター、ビルドアップ、CK、PKと失点のフルコースを喰らい、ホームで屈辱の5失点を喫して完全崩壊したチーム状況でミラノダービーに向かうことになる。
PSV戦後の休日返上トレーニングにより強度を取り戻し、良いリスタートを切れそうではあったが、ローマ戦の終盤からはブーストが切れて頭も足も動かなくなり、ウィークポイントを突かれ続けた結果、1月は僅か1勝しかできず、7試合で18失点。首位ナポリとは15ポイント差に。個人を見てもテオとジルーの心身にはワールドカップの疲労が溜まってパフォーマンスが上がらず、その他の主力選手にも取って代わる選手は出てこない。タタルシャヌのパフォーマンスにも限界を感じざるを得なかった。となると、当然、補強を期待したが獲得したのは格安第4GKのデビス・バスケスのみ。逆転スクデットは愚か、来季のCL出場権獲得すら危ぶまれる状況になった。
2・3月
サッスオーロ戦から中6日で迎えたミラノダービーでは失点を減らすべく5-3-1-1で引きこもる戦い方を選択したが、前半は全くボールを奪う形を作れずに殴られ続けCKから失点。後半は3-4-1-2でプレスに出ていけるようになるが、ジルーが唯一の決定機を決められずに敗れ、公式戦7試合未勝利で6位に転落した。
しかし、イブラが今季初のベンチ入りを果たした中4日のトリノ戦では3-4-2-1で配置を噛み合わせ、持たせたところから奪いに行く戦い方がそれなりに機能し、不調だったテオとジルーで得点を奪い、初先発のチャウが期待に応えて、年始のサレルニターナ戦以来の勝利を無失点で飾った。中3日で迎えたトッテナムとのファーストレグでも同じ戦い方を採用し、序盤に奪った先制点がチームにさらなるエネルギーを与えて、勝負どころのデュエルで負けずにウノゼロで先勝する。中4日のモンツァ戦は3-4-1-2でトップ下のブラヒムがCBとボランチへのプレスを使い分けて、メシアスのボレーで先制点も奪った良い内容の前半だったが、後半はモンツァの修正に対応できずに苦しい時間が長く、最後は5-4-1でなんとか逃げ切った。1週間空いたアタランタ戦では遂にメニャンが先発復帰すると、攻守で完璧な試合を行い、相手をPA内に侵入させずにシュートを僅か3本に抑えて無失点での公式戦4連勝を達成した。
3月のインターナショナルマッチウィークまで勢いを持続させたいところだったが、中5日のフィオレンティーナ戦では、レオンとクルニッチの出場停止に加えて、ブラヒムが負傷で欠場すると、3バック導入後初となる4バックへのプレッシングと相手のマンツーハイプレスに苦戦して敗れてしまう。中3日で迎えたトッテナムとのセカンドレグは0-0でもOKという割り切った戦いで、その通りにスコアレスドローで11年ぶりのベスト8進出を果たす。しかし、中4日のサレルニターナ戦では集中力を欠いた失点が重く響いて引き分けで終えると、テオとジルーを欠いた中4日のウディネーゼ戦では、イブラが先発し、PKを決めてセリエA最年長得点記録を樹立するが、失点のタイミングと内容が非常に悪い完敗で3月を未勝利で終えた。
3(5)バックへの戦術変更とチャウの台頭で失点を減らして復調した2月から一転して3月はポゼッションの質を問われ、試合毎の集中力の差も影響して1勝もできずに終えた。ライバルたちも揃って勝点を取りこぼしているおかげで、2位ラツィオと4ポイント差の4位になんとか踏みとどまっている。
5-2のブロックによって守備が安定し、崩されにくく、中央を固められるようになった一方で、シャドーか2トップでの先発が増えたレオンは個性が消えてしまう。保持時は4バックへ可変する方法も試合によっては採っていたが、それがレオンにとって助けになっている様子はなかった。テオとジルーの重要度は言わずもがな、この期間でブラヒムはプレッシングのキーマンになり、クルニッチはバランサーとして不可欠な存在になった。
4月
3月のインターナショナルマッチウィークで、今季フル稼働してきたカルルと負傷明けだったイブラが負傷して帰還。4月最初の試合は首位を独走するナポリとのアウェイゲームだったが、ミランは2・3月の3(5)バックから、ベナセルがトップ下に入り、トナーリ、クルニッチとともに中盤で攻守にハードワークすることでバランスを見出す4-2-3-1に変更すると、配置、ゲームプラン、質、強度、集中力で上回って4点を奪う、驚愕の完勝劇を見せる。中4日のエンポリ戦ではターンオーバーを行い、被保持4-3-1-2のミラーゲームを展開したが、ブロックを組む相手を崩しきれずにスコアレスドロー。
中4日でナポリと今度はCL準々決勝で対戦。互いに被保持を修正して臨み、ミランはナポリのプレッシングに苦しんだが、ブラヒムが再び魔法をかけて奪った1点をメニャンが守りきって先勝する。中2日アウェイのボローニャ戦はメニャン以外総入れ替えで戦い、低かった期待値を上回る内容を見せたが、試合開始早々の失点が響いて引き分け。
中2日アウェイの連戦かつ、4月3度目のナポリ戦は、ミランがビルドアップを修正し、被保持で全員がハードワークを行うと、レオンとメニャンが特別な才能を発揮して16年ぶりの準決勝進出を果たした。中4日のレッチェ戦は持たされる試合展開だったが、セットプレーから先制し、レオンがカウンターで追加点を奪う理想的な勝ち方で4位に浮上した。しかし、復帰したばかりのイブラがウォーミングアップ中の負傷で再離脱してしまう。
中盤3人のハードワークをベースにした4-2-3-1で守備力を維持しながらレオンが復活し、カラブリアとケアーの復調で守り切れる場面が増えたことで、今季絶好調のナポリを3試合で1失点のみに抑えた。一方でナポリ戦に挟まれたカンピオナートでは積極的にターンオーバーを採用したが、持たされる状態を打破する質不足を否めず、ナポリ戦以外の3試合では3得点に留まった。それでも期間内成績は3位で、連戦だったことを考慮すれば相対的には悪くない結果でもあった。
4月末〜6月
中5日で迎える同勝ち点のローマとのアウェイゲームから7連戦が始まる。連戦の影響で互いにミスが多い凡戦となり、後半ATにカウンターから失点を許したが、後半AT6分にチャウを前線に上げたパワープレーからサレマが決めて勝ち点1を拾う。この結果、2位から7位が6ポイント以内に収まる大接戦になり、インテル、ローマと勝ち点が並び、インテルが得失点差で上回ってミランは5位に転落する。
中3日のクレモネーゼ戦からはホーム3連戦。クレモネーゼ戦はブラヒムとデ・ケテラーレの2トップを採用したが、保持の狙いはすぐに対策を立てられて攻めあぐねる展開になり、再びカウンターから失点するものの、再びチャウのパワープレーからFKを獲得し、メシアスのシュートがディフレクションして決まるラッキーな引き分けで勝ち点1を拾う。アタランタに抜かれて6位に転落し、中2日で2位のラツィオと対戦。10分にレオンが負傷交代するが、強度の高いプレスとコンパクトな組織を維持して被枠内シュートを0本に抑え、ハイプレスからのショートカウンターとテオの一人カウンターで2点を奪う快勝で4位と2ポイント差の5位に浮上。
公式戦9試合無敗で意気揚々と臨んだ中3日のCL準決勝インテル戦は10分で2失点を喫し、17分でべナセルが負傷交代。保持、被保持、トランジション、セットプレー、何れの局面でも劣って1stレグを落としてしまう。中2日のアウェイスペツィア戦では、インテルと似たような戦い方で挑んできた降格圏の相手に対して、良いところなく、セットプレー2発で完敗し、残り3試合で4位と4ポイント差になってしまう。まさに”二兎追う者は一兎も得ず”状態になりかけたミランはミラネッロで緊急合宿を行い、クルヴァ・スッドから激励を受け、レオンも復帰して中2日の2ndレグに臨んだが、改善してインテルを上回った部分は見られず、至極妥当な敗退となった。
夢から覚めて迎えた中3日のサンプドリア戦では、降格が決まっている相手の緩慢な守備にも助けられ、ジルーがトリプレッタを記録するなど5得点を奪う快勝。さらに、不正会計に対する裁定でユヴェントスの勝ち点が10ポイント剥奪されたことで4位に浮上したことで、次節引き分け以上で4位以内が確定することになった。
アドリ宅のランチパーティーを経て迎えたユヴェントスとの直接対決は、両軍ともに重い試合で、総じて低パフォーマンスだったが、ジルーのヘディング一発で勝ちきり、1試合を残して4位以内を確定させた。最終節は是が非でも勝ち点がほしい降格圏のエラス・ヴェローナをサン・シーロに迎えたが、前半は5-3-2ブロック崩し、後半はプレス回避と今季積み上げてきた保持の部分で上回って3連勝を達成し、試合後の感動的なイブラの退団セレモニーで浮き沈みの激しかった22-23シーズンを締め括った。
上位陣と降格圏の相手としか戦わない期間だったが、インテルとスペツィアの3連戦は5-3-2ブロックに為す術なく敗れ、ショートパスのビルドアップに拘るラツィオには自分たちのサッカーを完遂して勝ちきれたことからも分かるように、得意な相手と苦手な相手が顕著に結果に顕れた終盤戦となった。CL準決勝敗退後の相手が降格が決まってモチベーションが低いサンプドリアで、ズルズル連敗せずに大量得点でリスタートを切ることができたのは運が良かったかもしれない。
実質5位の4位でCL出場権を確保、CLは望外のベスト4、コッパ・イタリアは初戦のラウンド16で敗退、タイトル獲得のチャンスだったスーペルコッパ・イタリアーナは惨敗。なんとも評価が難しいシーズンとなったが、結果的にコッパ・イタリアは選手層の薄さを考慮すると負けて救われたし、負けて然るべき大会だった。
セリエAのスタッツ
- ホーム成績:13勝4分2敗、41得点20失点。2位。
- アウェイ成績:7勝6分6敗、23得点23失点。7位。
- 64得点(4位)。ゴール期待値59.7(3位)
- シュート数551(4位)。
- ビッグチャンスを作った回数85(1位)、逃した回数65(1位)。
- CK数187(9位)。
- オフサイド数61(10位)。
- 43失点(7位)。無失点試合12(6位)。失点期待値40.6(5位)。
- セーブ数83(16位)。
- インターセプト数7.6(16位)。タックル成功数11.1(2位)。
- ポゼッションタイム29分57秒(6位)。
- 1試合平均パス成功数391.3(6位)。ロングボール成功数29.9(5位)。
- 1試合平均クロス成功数4.5(8位)
- 1試合平均走行距離108.205km(13位)/スプリント距離9.266km(3位)
- PK獲得回数5(12位)。献上回数5(11位)。
個人評価
参照データ:https://www.transfermarkt.co.uk/ac-milan/leistungsdaten/verein/5/plus/1?reldata=%262022
GK
#16 Mike Maignan
9月のインターナショナルマッチウィークで負ったふくらはぎの怪我は当初は1ヶ月程度で復帰でき、ワールドカップにも間に合うと言われていたが、復帰目前になって再発し、復帰できたのは2月末となった。その影響でセリエA、CL、計29試合の出場に留まり、ワールドカップも棒に振ってしまった。それでも、パフォーマンスの内容は圧倒的で、いるといないとではゲームプランのバリエーションに大きな差が生じる。ワールドカップ後のフランス代表では主将だったロリスの代表引退に伴い正守護神に昇格すると、早速神セーブを連発している。
#1 Ciprian Tatarusanu
メニャンの負傷離脱でセリエA16試合、CL5試合、スーペルコッパ・イタリアーナ、コッパ・イタリアの計23試合に出場し、31失点、クリーンシート7回。通常の2ndGKとしての役割は十分に果たし、DFライン裏のカバーやディストリビューションなど、37歳でも成長しようという姿勢も見られたのは尊敬に値するが、人間はないものねだりをしてしまうもので、あまりにもメニャンの離脱が長引いたことで、タタルシャヌに不満を感じる場面も増え、メニャンが恋しくなってしまった。契約満了での退団が確実。3シーズンありがとうございました。
#83 Antonio Mirante
最終節の終盤に記念のミランデビューを果たしたが、ファーストプレーでFKに飛び出すも遅れてパンチングをできない不安度満点のデビューだった。契約満了での退団が濃厚かと思われたが、1年の契約延長で40歳になる来季も第3GKを担うと見られる。
#96 Andreas Jungdal
冬の移籍期間でオーストリアのアルタッハにローンで移籍し、加入直後から6試合連続先発したが、1試合も勝てず、負傷離脱後は出番がなかった。復帰からの移籍先探しか。
#77 Devis Vásquez
1月にユングダルに代わる第4GKとして加入したコロンビア人。コロンビア代表として3月に来日した。能力的には未知数で、試合前のウォーミングアップを撮影した映像では代表レベルの実力があるのか疑問が残る。移籍金が格安、本人がイタリアでプレーしたい、ミランが獲得したという泊を付けて転売して小銭稼ぎ、今夏に売却してEU圏外選手獲得枠を増やすための獲得だと邪推される。
CB
#23 Fikayo Tomori
今季も主力として出場し続け、チーム3位の出場時間を記録したが、マーカーに入れ替わられたり、離してしまったり、集中力を欠いたプレーが多く、不安定なシーズンだった。チームとしてプレスをかけられていないことが少なくなかったので、CBが狙いを絞って前に行けないのはチームの問題でもあるが、行けそうな場面でも迷いがあるように見えることがあった。サイドのカバーに出てもドリブルでかわされたり、過去の1.5シーズンからプレーの水準を落とした。
#20 Pierre Kalulu
CBの主力兼RSBのバックアッパーとして3月のインターナショナルマッチウィークでふくらはぎを負傷するまで全試合に出場した。負傷するまではDF陣の中では最も波が小さいパフォーマンスだったと思うが、かと言って良かった印象も薄く、試合ごとにCBとRSBの頭を切り替えることに苦労していたように感じた。復帰後はミスが目立ち、チャウの台頭とカラブリアの復調でターンオーバー要因になっていった。
#28 Malick Thiaw
8月末にシャルケから加入すると、後半戦から出番を増やし、終盤戦はレギュラーに近い状況まで序列を上げ、今季唯一の当たり補強となった。攻守に有用な空中戦の強さ、長い脚でマーカーの後方や脇からボールを奪う守備、縦パスを入れる技術と積極性を持ち、トモリ、カルル程ではないが、十分な機動力も持ち合わせており、現陣容では唯一無二の立ち位置を確立した。セットプレーに何度も頭で合わせたが、惜しくも今季は得点を奪うことができなかったので来季は5得点ぐらいを期待したい。
#24 Simon Kjaer
昨季12月に負った左膝前十字靭帯損傷と内側側副靱帯損傷の大怪我から復帰し、ワールドカップにも間に合ったが、34歳ということもあり、コンディションを安定させることが難しくなってきた。ミドルプレスかブロックディフェンスでの起用が最適だろうが、負荷が高いハイプレスでもコンディションさえ良ければ、守備の技術では他の追随を許さないので十分に戦力になっていけるはず。
#46 Matteo Gabbia
前半戦はケアー、カラブリア、フロレンツィの負傷が相次いだ時期に出場機会を得て、CLではセットプレーから得点を奪うなど、攻守に穴を埋めるだけのプレーを見せたが、中断明けの絶不調期を最後に、チャウが台頭してきてからは出場機会を失った。去就は未定だが、ローンでも完全でも他で試合に出続けたほうが良いと思う。
RSB
#2 Davide Calabria
負傷で計13試合を欠場。1月の復帰後は個人もチームの状態も悪かったが、4月からは復活し、ナポリとの3試合ではクヴァラツヘリアを完封する大仕事を完遂した。最終的にもセリエA25試合で1G5Aと悪くない数字も残した。ただ、右サイドバックとして攻撃力も守備力も中途半端なままなので、ライバルになる競争相手を獲得することも考えて良いのかもしれない。
#21 Sergiño Dest
夏の移籍期間終了前にフロレンツィの長期離脱を受けて、バルセロナから無償ローンの代わりに€3mの高額年俸を負担する形で緊急補強した。前半戦こそカラブリアの負傷もあって出場機会をもらえたが、全くと言って良いほど効果的な活躍をできず、2月以降は負傷とピオーリが好まなかったといわれる練習態度が原因で完全に構想外となった。守備難を補えるほどの攻撃力とインテリジェンスがあればまだやりようはあったが、ただのドリブル小僧だった。
#25 Alessandro Florenzi
昨季のローンから今季は完全移籍に切り替わり、両SBのバックアッパーとして期待されたが、2回の負傷離脱で34試合も欠場した。出場6試合中、先発は2試合だけで、勝利したのは最終節のみだった。32歳だが契約は2シーズンも残っているのでまだ復活できると信じたい。イタリア人で経験豊富なムードメーカーは重要。
LSB
#19 Theo Hernández
不動の左サイドバックとして、カラブリア欠場時は腕章を巻きながらチーム2位の出場時間を記録し、セリエAでは32試合で4G3A、CLでは2アシストだった。これだけ見れば普通のSBとしては全く悪くないシーズンのように感じるが、テオにはより高い次元を求めているので満足はできない。今季は試合ごとの出来にムラが多くあり、1〜2月は心身を酷使したワールドカップの影響で別人に見えるほど元気がなかったのは仕方ないとしても、それ以外でも存在感がない試合は少なくなかった。ただ、来季は26歳で若くはなくなるので、テオらしくはないがフルシーズンを戦うための体力をキープするために、試合によってはセーブすることも考えているのかもしれない。
#5 Fodé Ballo-Touré
昨季限りで退団かと思われたが残留し、連戦のテオを休ませるために今季は14試合に出場した。先発6試合のうち、勝利したのはエンポリ戦だけだが、ATにプロ初ゴールとなる決勝点を決める大仕事を成し遂げた。ただ、昨季から成長したと感じる場面はほとんどなく、最適解はやはり逃げ切りのためのLWG起用だった。今季こそ退団濃厚。
DM
#8 Sandro Tonali
ビルドアップ、チャンスメイク、フィニッシュ、プレス、プレスバック、カバーリングと全局面の役割を担った3年目の今季はチームの心臓として最多の出場時間を記録し、セリエAではリーグ6位の走行距離に加えて2G7Aでキャリアハイのゴール関与数を記録した。得点数は昨季が5点なので確実に増やすことができるが、今季の稼働量は負担が重すぎるので、チームのバランス調整かターンオーバーできる選手を用意しないと壊れてしまう。
#4 Ismaël Bennacer
序盤戦はボランチとして展開力とボール奪取で存在感を発揮し、4月からはトップ下として攻守に前後を繋ぐハードワークを見せて強敵撃破の立役者となった今季のチームMVP候補の一人。インテル戦で膝を負傷した影響で来季は前半戦を欠場し、1月のアフリカネーションズカップでコンディション調整をして復帰する流れになる見込みだが、1シーズン丸々いないことも想定した補強をするべきだと思われる。それだけ重要な選手。
#33 Rade Krunic
負傷で計12試合を欠場したが、今季もアンカー、ダブルボランチ、インサイドハーフ、トップ下、両サイドで穴を埋めるようにプレーしながら、最終的には昨季終盤のケシエのようなアンカーとしてレギュラーを掴んだ。出場時の平均獲得勝ち点がチームトップだった。ビルドアップの才能や器用なボールタッチがあるわけではないが、シンプルな繋ぎで保持の時間を作り、一定以上のフィジカル能力と気の利くポジショニングで水漏れを防いだ。暮らし安心クルニッチ。
#32 Tommaso Pobega
テルナーナ、ポルデノーネ、スペツィア、トリノへのローンから復帰したプリマヴェーラ出身の大型ボランチ。復帰1年目は謎の干され期間もあったが、左ボランチを中心に28試合に出場すると、3得点を記録し得点力の片鱗も垣間見せた。インサイドハーフ的な役割の試合では、レオン、テオとの連携に苦戦したが、終盤戦では左サイドに降りてゲームメイクを担う形で新たな可能性を見出しつつある。来季は主力に食い込むような活躍を期待。
#40 Aster Vranckx
ヴォルフスブルクから買い取りオプション付きローンで加入した20歳のベルギー人ボランチ。序盤戦から途中出場で少しずつ出場し、15節のフィオレンティーナ戦で勝利に貢献するが、後半戦はターンオーバーの先発2試合しか起用されず、計10試合の出場に留まった。先発時のインパクトが薄く、何をやらせれば輝くのかわからないまま終わってしまった。シーズン途中には練習では良いから買い取るかもしれないという報道もあったが、現在はトーンダウンして退団の流れ。
#41 Tiemoué Bakayoko
レンタル打ち切り濃厚から残留したが、案の定、出番は少なく、3バック導入後に2試合出てきたことでミラニスタを驚かせた。退団確実。
OM
#10 Brahim Díaz
マドリーからローン3年目の今季は負傷欠場は1試合のみで主にトップ下とRWGで45試合に出場し、セリエAでは6G7Aを記録した。昨季までは間で受けても潰されてしまうことが少なくなかったが、今季は23歳になりフィジカルが強化されて当たり負けする場面が少なくなり、重心が低く力強いドリブルでボールを運べるようになった。アンカーやボランチを背中で消しながらCBにプレスに行く精度、強度、判断力が上がり、プレスバックも頑張った。間違いなくキャリアハイのシーズンを過ごし、来季からはマドリーに復帰する。キック精度と決定力を上げて頑張ってほしい。
Hai illuminato San Siro 🔟💫
— AC Milan (@acmilan) 2023年6月10日
Grazie di tutto Brahim e mucha suerte Campeón! ❤️🖤
You brought joy to the San Siro 🔟💫
Thank you for everything, best of luck. Forza @Brahim! ❤️🖤#SempreMilan pic.twitter.com/P035Vg5YHA
👊 #BrahimIsBack 👊 pic.twitter.com/ieZ9cAq3St
— Real Madrid C.F. (@realmadrid) 2023年6月10日
#90 Charles De Ketelaere
マルディーニがこだわって辛抱強く交渉した末に加入し、序盤戦は初先発のボローニャ戦でアシストするなど、どんどん良くなっていくと思われたが、決定機を逃す場面や消極的なプレー選択が続いたことでミラニスタが不満を溜めていった。最後までそれは解決されず、40試合、1480分で1アシストのみに終わった。個人的にシーズン中に何度も起用法を模索してきたように、才能がないとは全く思わないし、使い方次第で輝く選手であることは間違いないと思うが、デ・ケテラーレにチームが合わせる必要もないし、ピオーリに活かせる気配がないので、良いオファーがあれば価値が下がりきる前に放出してレオン中心のチームに合う選手を獲得する資金に換えるのは悪くない選択肢。
#7 Yacine Adli
昨季にボルドーから獲得し、今季にローンバックの形で加入すると、練習試合ではLWGも務めながらサブ組のなかで存在感を発揮して期待が高まっていたが、先発1試合の計6試合とバカヨコの次に少ない出場時間しか与えられなかった。先発したヴェローナ戦はロングボールが多い試合で明らかに不向きな展開になったのはかわいそうではあるが、ハイプレスを機能させられなかった面もあった。ピオーリが全く信頼していないので来季はローン移籍が既定路線だが、ランチパーティーを開催したり、イブラのセレモニーで泣いていたり良い奴なのはわかったし、試合に出られなくても真面目に練習してそうなので報われてほしい。
RWG
#30 Junior Messias
小さな負傷が4回あって10試合を欠場し、計36試合で6G2A。昨季から先制点など価値ある得点を決めている印象があるが、アシスト数が少ないまま。左利きでサイドに張れる唯一の選手として重宝されているが、大外から中に絡んでいったり、クロスを上げるのは上手くなく、サイドに張って相手SBの裏、WBを押し込んで手前にスペースを作るのが主な仕事で、たまにドリブルで突破してくれれば良いという存在。序盤戦では積極的に裏抜けを狙っていたが、どんどん見られなくなっていったのは残念。クロトーネではインサイドハーフを務めていたが、インテル戦は失敗に終わった。
#56 Alexis Saelemaekers
11試合を負傷欠場した以外は招集されればほとんど出場し、レオンの代わりにLWGでもプレーし、計39試合で4G3A。CLの最初の2試合で連続得点を記録したことでCL男爆誕の予感が漂っていたが、負傷で止まってしまったのが悔やまれる。メシアスと違い、小技を利かせたドリブル、アジリティ、パスワークを組み合わせてサイドの密集をすり抜けるのが得意だが、ナポリ戦の覚醒ドリブルゴラッソは何が起こったのか。
陽の当たる左サイドの陰でチームのためにハードワークしてきたメシアスとサレマだが、来季はどちらかが放出される見込み。果たしてハードワークとクオリティを両立させる選手を獲得できるのか。
LWG
#17 Rafael Leão
トナーリと並んでチーム最多出場、リーグ4位の15G、リーグ2位タイの8アシスト、CLでは1G5Aと、昨季以上の数字を残し、得点に絡んだ試合は無敗、欠場した4試合は全敗と結果に大きな影響を及ぼす選手になった。ただ、安定した活躍をしていたわけではなく、シャドーや2トップで出場した3バックの期間は1アシストしかできなかった。契約延長も果たし、今後は本格的にレオン中心のチームになっていくはずだが、今のレオンのままでは諸刃の剣だと思っている。レアル・マドリーのように他のポジションにも一流の選手を配してバランスをとることができるチームであれば良いが、ミランにそれは不可能。戻る守備を免除されているにもかかわらず、簡単に自身の背後を使われてしまう緩慢なプレッシングや、ポジショニング、オフ・ザ・ボールの動きの質と量、クロスへの入り方を改善して武器を増やし、チームと自身の安定性を高めてほしい。
#12 Ante Rebic
負傷欠場は13試合で印象より少ないものの、先発12試合、計1226分の出場で3G2Aは昨季同様に物足りない結果であることに変わりない。開幕戦はCFで右サイドに流れて基点を作りながらドッピエッタを記録して良いスタートを切ったが、それが続かずに練習で負傷してしまう毎度お馴染みとなった負の流れに今季も襲われた。3G2Aは10節までに稼いだ数字で、終盤戦はピオーリが招集外にするなど退団確実。
CF
#9 Olivier Giroud
36歳でプレッシングにプレスバック、ロングボールのターゲットマンとタフな仕事を続け、ワールドカップにも出場しながら負傷欠場は1試合のみ、47試合に出場して18G7Aを記録し、今季も重要な試合で得点を奪い続けた。ワールドカップ以降は得点数が伸び悩んでいたが、最後の3試合で5点を稼いでセリエAでは13得点で昨季を超えると、今季の欧州5大リーグでは最年長の2桁得点者になり、ワールドカップではフランス代表の歴代最多得点者にもなった。頭が上がらない働きぶりだったので休みまくってください。
#27 Divock Origi
昨季のCLでの対戦で活躍され、今季リヴァプールからフリートランスファーで加入したが、36試合1186分で2G1Aと大きく期待を裏切り、1000分以上出場した選手のなかで最も平均獲得勝ち点が少なかった。高さも強さも速さもあるが、ゴール前の存在感が薄く、CFとして機能せず、終盤戦はLWGとして起用されることが多かった。ジルーの周りをセカンドトップとして衛星的に動くのが最も効果的だったと思うが、数えるほどしか見られなかった。2点が何れもゴラッソだったのはミラクルオリギらしさか。退団確実。
#11 Zlatan Ibrahimovic
昨季終了後に膝の手術を行い、2月末に今季初出場。初先発のウディネーゼ戦でセリエA歴代最年長得点の記録を更新したが、その後は筋肉系の怪我が相次ぎ、最終節後の退団セレモニーで現役引退を電撃発表した。
私がイブラを認知したのは海外サッカーに本格的に触れ始めたEURO2004のイタリアvsスウェーデンでの理解不能なヒールシュート。それからCL決勝やクラブワールドカップなどを経て私はミラニスタになり、インテルのイブラを恐れつつもサッカー選手としての圧倒的な個性に惹かれていた。バルセロナを経由してミランに加入すると、すぐに攻撃の中心を担ってスクデットに導いてくれた。そして、2020年のミラン復帰から昨季のスクデット獲得でミラニスタにとって正真正銘の神になった。イブラがいなければ、スクデットはおろか、ピオーリは解任され、レオンがMVPを取るような選手になっていなかったと言っても過言ではない。どこで現役を続けていても応援し続けたが、ミランで引退する決断をしてくれたことが嬉しいし、自分の身体に鞭を打ち、有言実行でミランを復活させてくれたことに対する尊敬と感謝の念を強く持っている。お疲れ様でした。ありがとうございました。
22-23セリエA第38節 vs エラス・ヴェローナ(H) 一定の積み上げ - 自業自得記録地獄
#22 Marko Lazetić
まだ19歳。トップチームでは8分のみの出場で、主にプリマヴェーラの試合に出場。UEFAユースリーグでは3試合2得点で後のベスト4進出に貢献するなど結果を残していた。1月にアルタッハへローン移籍したが、10試合で得点関与なし。先発は1試合のみで、左サイドでの出場だった。来季もローン先探しか。
監督
Stefano Pioli
今季も過去の2シーズン同様にマンツーマン寄りのハイプレスを戦術の軸とし、昨季からの継続で相手によって変わる可変式ビルドアップの練度を高め、アタッキングサードの崩しにバリエーションを加えることにトライした。それらを行いながら、セリエAとCLのターンオーバーを機能させる選手層を作り上げることにも取り組んだ。
しかし、今季も負傷者が多く、守護神でありビルドアップにも貢献するメニャンの長期離脱はチームに大きな影響を与え、過密日程のなかで出場時間を増やさざるを得なかった主力選手たちが疲労によりパフォーマンスを低下させた。前半戦はチェルシーを筆頭とした3バックでビルドアップを行う相手にプレスを裏返されて苦戦したなかでも、スカッド状況を鑑みれば及第点の成績で乗り切ったが、ワールドカップでテオとジルーが疲弊し、中断期間を良い過ごし方ができなかった1月は強度不足でハイプレスが全く機能しないガバガバな守備で解任論が噴出するほど厳しい時期を過ごした。その後は5バックへの変更でゴール前の人数を増やして失点を抑えたが、保持ではレオンを生かせずに得点力が落ち込んだ。4月以降は4バックでレオンをWGに戻し、時にプレスラインを下げる選択をしながらボランチ3人の同時起用で強度を保つことで強敵を撃破したが、ターンオーバー組が最後まで期待に応えることなく格下相手にポイントを落とした。
当初の構想は2チーム分の戦力でセリエAとCLを戦っていくはずだったであろうが、オリギ、デ・ケテラーレ、デストら即戦力として期待された新戦力が使い物にならず、レビッチ、フロレンツィら既存のバックアッパー組がまともに稼働してくれなかったことで、ピオーリの信頼を得られた選手は15人しかいなかったと感じる。その規模ではCLで上を目指しながら連覇を狙うのは難しかったし、ピオーリ自身も競争力を持つためにチームを改善しなければいけないと語っていた。
戦術的にはピオーリが監督である以上、プレス回避のビルドアップがブライトンやインテルのように整備されているわけではないが、ロングボールも用いてハイプレスをかわして一気に攻めきるのが保持の第一手段で、持たされて押し込んだ時のチャンスメイクとフィニッシュにパターンのようなものはなく、個々の資質と即興性と放り込みに依存するのは変わらない。持たされた状況を打開する良質なパサーやクロッサーとPA内のハンターの獲得が求められる。
生命線であるハイプレスは過去2シーズンの勤続疲労もあり、シーズンを通して強度を維持するのは難しくなっている。また、若手だった選手が中堅に突入していくことで回復力が落ちていくことも考慮すべきか。やはり選手層を厚くして、終盤戦のように相手や状況によってプレスラインを下げることで消費体力を軽減する必要がある。プレス強度指数PPDAは10.8でリーグ3位だった。
早急に改善が必要で手を付けやすいのはセットプレーの守備。被シュートは3番目に少ないが、失点数は3番目に多く、特に勝てなかった試合で何度も痛い目にあったので、改善されると勝ち点増に直接的に繋がるはずだ。
今季は言い訳の余地が多くあり、CLベスト4と棚ぼたのCL出場権獲得でピッチ上の出来を誤魔化した感じになったが、5季目となる来季はマンネリ化しつつあるチームの改善は必須で、後述するように責任重大な役目も担うため、勝負の1年になるだろう。
来季の展望
手頃な成長株で堅実経営を続けたいカルディナーレと、更に上を目指すために予算を拡大し、その予算管理もしたいマルディーニが衝突し、マルディーニとマッサーラはクラブを離れることになった。今季の補強失敗の責任をマルディーニだけに押し付けるのは間違っているし、顔役でもあったマルディーニが去ることによるデメリットは少なくないが、マルディーニの要求は明らかに過大で、今は着実に黒字額を増やして安定した経営をする企業に成長させる道のりにあるので、カルディナーレの判断を尊重したい。せっかく黒字に戻ったのに再び火の車状態になるのは嫌だ。
マルディーニとマッサーラの退任に伴い、SDは置かずにフルラーニCEOが交渉を担当し、チーフスカウトのモンカダの地位が上がり、ピオーリが直接的に選手の選定にも関わっていくと言われており、ピオーリの責任はより重大になった。
タタルシャヌ、バカヨコ、デスト、ヴランクスは確実に退団し、オリギ、レビッチ、バロ=トゥーレは売却して資金に追加したい。確実に放出されないのはメニャン、カラブリア、チャウ、テオ、トナーリ、べナセル、クルニッチ、レオン、ジルーで、他はオファー次第で売却があり得る。個人的補強ポイントは2ndGK、CB兼任LSB、攻撃的両SB、守備的アンカー、攻守に働くMF、左利きRWG、CF、汎用性の高いアタッカー。
タタルシャヌに代わる2ndGKはアタランタからフリーでスポルティエッロの加入が確実視されている。今季終盤はムッソからレギュラーを奪っており、CLでは自国育成枠で登録できるので素晴らしい補強。
個人的にガッビアは放出で代わりにCBの5番手かつLSBも務まる左利きの若いDFを獲得したい。候補はエラス・ヴェローナからローンでサンプドリアでプレーをした21歳アミオーネ。荒削りなアルゼンチン人だがイタリアの市民権を持っており、まだ市場価格は安いはず。
デストに代わる攻撃的SBはマッゾッキの名前がよく出ていたが最近は聞かなくなった。両サイドで使えて積極的な攻撃参加と左サイドからカットインドリブルを持つイタリア人なので来てほしい。他に候補を上げるなら、RCランスのWBフランコフスキ。28歳でSBよりもWG寄りだと思うが、サイド全エリアを任せられるクロッサー。
クルニッチはマルチロールとして置いておきたいのでアンカーが本職の選手が欲しいが、残念ながら噂はない。スタイルにもプロジェクトにも合いそうなのはヒュールマンとシャウテン。個人的にはライカールト、ファン・ボメル、デ・ヨングとオランダ人アンカーがハマってきた歴史とマンツーマンディフェンスの申し子という点でデ・ローンをケシエ退団後から推しているが実現する気がしない。
中盤に質と量をもたらす選手はべナセルの状態を考慮すると2人取れるのが理想的で、一人はフリーでの獲得が近い鎌田大地。ハイプレスへの適性は未知だが、カバーエリアが広く、アタッキングサードの質の向上に貢献できる技術は間違いないはず。もう一人はロフタス=チークの名前が頻出していたが、マルディーニの退任で立ち消えになった。デ・ケテラーレを売却し、ピオーリが望むセルゲイに予算が降りれば良いが、来季で契約が切れ、イタリア市民権を持つニコラス・ドミンゲスも狙い目。ヴランクスのような若手ローン枠も一人いると良さそう。
左利きRWGはメシアスを放出して、24歳で来季で契約が切れるドリブラーのチュクウェゼに本腰か。オルソリーニも来季で契約切れ。ラツィオからフリーになる若いルカ・ロメロにも強い関心がありそう。サレマは左右WG、WB、トップ下、インサイドハーフのマルチロールとして残したい。
オリギに代わるCFは候補が多く、いろいろな名前が上がっている。献身性とパワーが何よりも求められ、PA内を制圧する能力も欲しい。今はフリーでWGも務まるマルクス・テュラム狙いのようだが、PSGとの競争は難しいだろう。USGのボニフェイスは名前が上がり始めた時期にELの試合を見たが、魅力的なフィジカルだけでなく、パスワークに絡むセンスもありそうで好印象を受けた。第3CFはコロンボを復帰させるのも悪くないが、個人的にはサブでも文句を言わなさそうでコストもかからなさそうなトマ・アンリやジュリッチのような放り込み特化型パワーヘッダーを用意しておきたい。
レビッチに代わる前線のマルチロールの噂はエル・シャーラウィとアメリカ人でチェルシーが換金したいプリシッチくらいで、エル・シャーラウィはローマと契約延長の流れになってきた。個人的にはアタランタからエンポリにローンされていたカンビアーギが来季で契約切れなので狙いたい。レオンとアンダー代表時代にチームメイトだったモンツァのダニー・モタも候補。スペツィアで良いアクセントになっていたダニエル・マルディーニの復帰もあるか。
来季はアジアカップとアフリカネーションズカップが1月にあるので、ベナセル以外に、もしも獲得すれば日本代表の鎌田、ナイジェリアのチュクウェゼとボニフェイスらも1ヶ月不在になることや来季も多くの負傷離脱があることを想定する必要があり、売却したい選手をすんなり換金できるとも思えないので、大体€50mと言われる予算内で完璧な編成をするのはフリーとローンを最大限に活用しないと難しい作業になるだろう。
Manchester City are the champions of Europe!
— UEFA Rankings (@UefaRankings) 2023年6月10日
With Man City winning the UCL:
- Feyenoord secured the Pot 1
- Inter will stay in the Pot 2
- Shakhtar Donetsk confirmed Pot 3
All teams in the Pot 1 and Pot 2 of the 2023-24 Champions League group stage draw are confirmed now. pic.twitter.com/HCEjiP2q3E
CLはポット3で一昨季のように厳しい組に入る可能性が高いが、逆にポット1・2のチームにとってはポット3でミランを引きたくないのである。地獄の組み合わせはバイエルンorPSG、マドリー、ニューカッスル。なんとかグループステージを突破しましょう。
6/12に元イタリア首相、元ミランのオーナー兼会長のシルヴィオ・ベルルスコーニが亡くなった。
あなたが作り上げたミランがなければ私がミラニスタになることはなかったでしょう。安らかな眠りにつかれますよう、お祈り致します。
AC Milan profondamente addolorato piange la scomparsa dell’indimenticabile Silvio Berlusconi e si stringe con affetto alla famiglia, ai collaboratori e agli amici più cari.
— AC Milan (@acmilan) 2023年6月12日
“Domani sogneremo altri traguardi, inventeremo altre sfide, cercheremo altre vittorie. Che valgano a… pic.twitter.com/CWmYy8xzwi
Pictures that defined an era 🏆
— AC Milan (@acmilan) 2023年6月12日
History was made 📚
Le foto che hanno fatto la Storia pic.twitter.com/Anyko5AXh8
Forever part of our history, eternally in the hearts and minds of every Rossonero.
— AC Milan (@acmilan) 2023年6月12日
Il Presidente della nostra storia. Nel cuore, nella memoria, nell’eternità. pic.twitter.com/cyMyctQGAw
Il Presidente Steven Zhang e tutta FC Internazionale Milano esprimono il proprio profondo cordoglio per la scomparsa del Presidente Silvio Berlusconi.
— Inter (@Inter) 2023年6月12日
La sua figura ha lasciato un segno indelebile nella storia del nostro Paese. Le sfide tra l'Inter e il suo Milan hanno reso la… pic.twitter.com/YHLZzNIMOI
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。お疲れ様でした。
Forza Milan!!