自業自得記録地獄

主にACミランとセリエAに関する備忘録。

22-23 セリエA総括 ~チーム編~

 ナポリの独走、波が激しい上位陣、モンツァの躍進、遂に崩壊したサンプドリア。22-23シーズンのセリエA各チームをスタッツや大まかなメンバー、開幕前の予想順位とともに簡潔に振り返ります。

 

Teams Statistics | Lega Serie A

Italian Serie A 2022-23 Season Stats | The Analyst

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優勝 ナポリ

 90P 28W6D4L 77G28C (予想5位)

 ☆MVP:オシムヘン ★MIP:マリオ・ルイ

 昨季3位のメンバーからインシーニェ、メルテンス、クリバリ、ファビアン・ルイスオスピナと中心選手がごっそり退団したが、世界的に名を知られた存在ではなかったクヴァラツヘリアとキム・ミンジェスパレッティの攻守にアグレッシブなスタイルにすぐにフィットすると、開幕から大活躍を見せてスタートダッシュに成功する。メレトは守護神に固定起用されたことで安定したパフォーマンスを見せ、マリオ・ルイはロボトカだけではない”もう一人のレジスタ”としてチャンスを量産するなど既存戦力も成長を示し、無敗で2位と8ポイント差の首位で前半戦を終え、ワールドカップで疲弊するほど勝ち進んだ選手が出ずに後半戦に突入すると、後半戦はインテルラツィオに敗れたものの、4月までに2位に19ポイント差をつけてスクデットをほとんど手中に収める。4月の頭にオシムヘンが離脱し、ミランにホームで0-4の大敗を喫してからは、メンバー固定による疲労も影響したのか、複数得点を奪えない苦しい試合が続いたが、31節のアウェイユヴェントス戦のラスパドーリによるATの決勝点が決定打になり、33節に5試合を残して33年ぶりの優勝が決まった。

 最多得点。セットプレー得点数2位。枠内シュート数最多。決定率12%。

 最少失点セットプレー失点数最少。無失点18試合(3位)。PPDA(プレス強度指数)10.8(2位)。敵陣でボールを奪った回数最多

 平均走行距離107.7㎞(14位)。ポゼッションタイム最長パス成功数最多10本以上パスを繋いだ攻撃回数最多1回の攻撃に要する平均時間12.22秒(1位)

 スタッツ通り、ボールを保持して相手に攻められる時間を少なくするチーム。そのために強度の高いハイプレスとネガティブトランジションでボールを奪ってショートカウンターが軸となった。SBと3MFを中心にボールを保持すると、クヴァラツヘリアがドリブルで切り裂き、両サイドからのクロスをオシムヘンが押し込む。ハイプレスを受けると、スピードとパワーを兼備するオシムヘンがロングボールを収めて速攻で仕留める。セットプレーも攻守に強く、隙がなかった。全チームから勝利を奪ったのもスクデットに相応しいチームだった。

 来季はスパレッティが退任して、ローマを率いた経験があるリュディ・ガルシアが就任し、キム・ミンジェは大金を残してステップアップすることが濃厚で、ジエリンスキも退団の可能性があり、アフリカネーションズカップでザンボ・アンギサとオシムヘンが離脱する可能性が高いことなど不安要素が多い。補強に期待したいが、スクデットの立役者であるSDのジュントリはユヴェントス行きの噂が根強く、動向が注目される。

 

2位 ラツィオ

 74P 22W8D8L 60G30C (予想7位)

 ☆MVP:プロヴェデル ★MIP:フェリペ・アンデルソン

 サッリ2季目はGKとCBのレギュラーが完全に入れ替わり、絶対的な主力を維持することに成功した。美しさすら感じる4-5-1のゾーンプレスと、バックラインから少ないタッチで前後にパスを出し入れし、ボールを動かして相手を動かしスペースに入っていくビルドアップなど、昨季から徐々に浸透してきたサッリズモが攻守に発揮されるようになり、序盤から安定して勝点を稼いで前半戦を4位で終える。ワールドカップの影響を受ける選手はおらず、後半戦も3戦未勝利で6位に落ちた時期以外は4位以内を維持し、5戦1勝の時期があっても、スクデットを獲得した99-00シーズン以来の最高位となる2位フィニッシュを果たした。一方でEL、ECLでは他のセリエA勢が健闘したなかで不甲斐ない結果を残して悪目立ちしてしまった。

 得点5位。シュート数14位、枠内シュート数7位。セットプレーシュート数19位。決定率13%。

 失点2位。失点期待値6位。無失点21試合(1位)オープンプレー被シュート数10位、失点数最少PPDA14.2(16位)

 平均走行距離115.9km(1位)スプリント距離最長。ポゼッションタイム4位。パス成功数2位クロス成功数最少

 良くも悪くも自分たちのスタイルをどの試合でも徹底する。全員が攻守でポジションを守ってプレーに参加しないと成立せず、パスとトラップの技術、攻守で複数の味方と繋がる感覚を持っていなければならない。シュート数は多くないが、確率の高いエリアまで運んだ時はチャンスを確実にモノにした。ゾーンプレスは一定の機能性を見せた一方で、ハメて奪いきる形よりもサイドに追い込む形なので追い込みきれずに脱出されることもしばしば。相手によってはプレスが効かずにプロヴェデル、カザーレ、ロマニョーリが壁になって防いだ試合も少なくなかった。

 来季限りで契約満了となるセルゲイの去就と、移籍した場合の後釜探しが来季の鍵を握るが、トレイラを狙っているのは羨ましい。

 

3位 インテル

 72P 23W3D12L 71G42C (予想3位)ビンゴ

 ☆MVP:チャルハノール ★MIP:ムヒタリアン

 蘇寧グループの経営難により予算が限られたなかで、オナナとムヒタリアンをフリーで獲得し、出戻りのルカクと監督の弟子であるアチェルビをローンで獲得。高年俸のベテランを契約解除し、若手有望株のカサデイを売却することで収支のバランスも取って、ミランに奪われたスクデットの奪還を目指した。

 開幕8試合でラツィオミラン、ローマだけでなく絶好調のウディネーゼにも敗れ、ルカクとブロゾヴィッチが負傷離脱。9節からオナナとアチェルビが先発し始め、チャルハノールがアンカー、ムヒタリアンがIHで先発すると、ビルドアップの質が改善され、前半戦の残りを6勝1敗でまとめて4位で中断に突入し、中断明け初戦の16節はナポリに今季初黒星を付ける。しかし、その後は持たされてカウンターを受けたり、終盤に失点してしまったり、いくら撃てどもゴールにならないアンラッキーな試合が続き、16節から4月中旬の30節までの期間内成績は10位と勝点を伸ばせずCL出場権獲得が危ぶまれ始めた。それでも、4月から始まった17連戦のなかでルカクとブロゾヴィッチがようやく復調し、最後の8試合を7勝1敗で乗り切った。コッパ・イタリアスーペルコッパ・イタリアーナとの3冠を狙ったCL決勝はマンチェスター・シティに善戦したが、惜しくも09-10シーズン以来のビッグイヤーには手が届かなかった。

 得点2位。ゴール期待値最高。シュート数最多、枠内シュート数2位。枠に当てた回数17回(2位タイ)。決定率11%。

 失点6位。無失点13回(5位)。失点期待値3位。PPDA11.6(5位)。敵陣でボールを奪った回数2位タイ。

 平均走行距離112.4㎞(3位)。ポゼッションタイム2位。パス成功数3位。ロングボール成功数4位。クロス成功数最多

 自陣後方でオナナを含めた6、7人によるパス回しでプレスを誘発し、CFのポストプレー、WBとIHの追い越しで一気に縦に運ぶスタイルが定着した。ミドルゾーンではIHがサイドに開くなどして中盤にスペースを作り、ラウタロが顔を出してスペースに展開する。押し込んで崩しきれない試合はジェコ、ルカクラウタロの同時起用でクロスを放り込みまくった。被保持は中央を消す大前提のもと、相手と状況により、ハイプレス、ミドルプレス、ブロックを使い分けた。

 大きなキャピタルゲインを生むオナナを売却するのかが来季の大きなトピック。ブロゾヴィッチをサウジアラビアに掻っ攫われる可能性があり、チェルシーとのルカクの交渉も難航。

 

4位 ミラン

 70P 20W10D8L 64G43C (予想1位)

 ☆MVP:ベナセル ★MIP:チャウ

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5位 アタランタ

 64P 19W7D12L 66G48C (予想8位)

 ☆MVP:コープマイネルス ★MIP:ホイルンド
 ガスペリーニが7シーズン目。フロイラー、ペッシーナという黒子役の主力を放出して、中盤にエデルソン、前線にルックマンと若いホイルンドを獲得した。欧州コンペティションには参加せず、セリエAに集中する。

 序盤はプレスよりも5-4-1でゴール前に人数を割いた堅い守備を軸にカウンターとセットプレーで勝点を稼いで2位につけていたが、徐々に守りきれなくなって11節にラツィオに初黒星を献上すると、中断前には3連敗を喫した。中断明けの1月は撃ち合い上等スタイルで無敗だったが、これも長続きせず。結果的に2周目の対戦で8敗を喫して4位のミランとは6ポイント差となったが、5位でEL出場権を獲得し成功と言えるシーズンになった。

 得点3位。枠内シュート数5位。決定率12%。

 失点10位タイ。失点期待値42.4(8位)。インターセプト数最多。PPDA12.2(6位)。敵陣でボールを奪った回数5位。

 平均走行距離113.1km(2位)。ポゼッションタイム9位。パス成功数9位。クロス成功数4位。

 相手によって3-4-2-1、3-4-1-2、3-3-2-2、3-3-3-1、4-2-3-1を使い分けて人を捕まえやすい状況を作ってプレスに行くのは変わらない。昨季まではビルドアップから押し込んでアタッキングサードでの保持が長かったが、今季はホイルンドとルックマンのスピードを生かしたカウンターやシンプルなクロス、ミドルシュートが目立って今季も得点数は上位に入った。失点数は得点が増加し始めた過去4季から変化がない。

 ホイルンドが1シーズンで大金を残して去っていく模様。次の宝石が楽しみだ。

 

6位 ローマ

 63P 18W9D11L 50G38C (予想4位)

 ☆MVP:スモーリング ★MIP:エル・シャーラウィ

 モウリーニョ1季目でECLの初代王者に輝き、戦術が根付いた今季はディバラ、マティッチ、ワイナルドゥム、ベロッティら実力者を獲得しCL出場権獲得を目指す。

 序盤戦から3バックの持ち運びが目立ち、ディバラが圧倒的な質の高さで攻撃陣を牽引したが、決定機を決めきれない試合によって勝ち点を伸ばしきれず、中断前は4位と3ポイント差の7位。中断後は良いスタートだったが、4位位以内に上がると次節にポイントを落とす連鎖が続き、クレモネーゼには初白星を献上する。終盤戦は優勝すればCL出場権を得られるELとのターンオーバーを頻繁に行うが、負傷者が多く、選手たちは満身創痍で、3位だった31節から7試合未勝利で6位に転落し、ELでは決勝で敗れてCL出場権を逃す。最終節に残留を目指すスペツィアに逆転勝利を収めて6位を死守した。

 得点9位。ゴール期待値58.4(4位)。枠内シュート数9位。オープンプレーシュート数13位、得点数14位セットプレーシュート数4位、得点数3位枠に当てた回数17回(2位タイ)PK獲得回数10回(最多タイ)。決定率10%。

 失点4位。失点期待値32.8(2位)インターセプト数3位。PPDA13.8(13位)。敵陣でボールを奪った回数16位敵陣でボールを奪いシュートを撃った回数19位

 平均走行距離109.7km(10位)。スプリント距離15位。ポゼッションタイム12位。パス成功数12位。

 基本的に5-2-3か5-3-2でミドルゾーンにセットしてCBが積極的に前で潰しに行く。プレスに行くときは中盤を噛み合わせるが深追いはしない。エイブラハムがロングボールや縦パスを味方に繋げ、マティッチが配球し、ディバラとペッレグリーニが近い距離でプレーできると攻撃の質が上がる。

 モウリーニョが続投するのか確実な見通しはなく、来季も厳しい財政状況であることは変わらず、すでにアワールとエンディカをフリーで確保し、ローン中のクライファートの売却に成功したのは朗報だが、有望株のタヒロヴィッチをアヤックスに売却し、今夏のイバニェスの移籍も濃厚。

 

7位 ユヴェントス

 62P(-10) 22W6D10L 56G33C (予想2位)

 ☆MVP:ラビオ ★MIP:ファジョーリ

 アッレグリが復帰した昨季は無冠で2季連続の4位に終わった。今季はキエッリーニ、ディバラ、デ・リフト、モラタらが退団した一方で、ディ・マリア、ポグバ、ブレーメル、コスティッチ、パレデス、ミリクと大型補強を敢行した。

 4-3-3か4-4-2で戦っていた9節までは攻守にちぐはぐな部分があって8位と出遅れたが、3-5-2を採用し始めた10節からは中央を固めて守りやすくなり、中央に人数を割き、サイドに優秀なクロッサーを配置して攻めやすくなり、ファジョーリも台頭し始めると中断期間を挟んで無失点8連勝を記録して2位まで上昇する。しかし、18節にナポリに5失点の大敗を喫して連勝が止まると、さらに、不正会計の懲罰で勝ち点15剥奪を言い渡され、11位にまで転落する。21節からは再び持ち直して、4月からコッパ・イタリアとELを挟む15連戦に突入するが、4月はセリエAで1勝しかできず、コッパ・イタリアもELも準決勝で敗れると、15連戦の最後のエンポリ戦キックオフ直前に、一旦白紙に戻っていた裁定が勝ち点10剥奪に確定したと発表され、心身ともにボロボロで4位争いの分水嶺となったミラン戦にも敗れて、実質3位の7位で今季も無冠に終わった。

 得点6位。シュート数5位、枠内シュート6位。クロス成功数3位。CK数4位。セットプレーシュート数3位、得点数18(最多)。決定率10%。

 失点3位無失点20回(2位)失点期待値42.0(7位)。セーブ数11位。クリア数7位。PPDA13.2(10位)。敵陣でボールを奪った回数11位。

 平均走行距離110.1km(8位)。ポゼッションタイム10位。パス成功数10位。ロングボール成功数3位。1回の攻撃に要する平均時間5位。

 ハイプレスは開始15分だけや先制するまでなど限定的で、基本は4-4-2ミドルプレスか5-3-2ブロックをコスティッチの位置で調整。保持はディ・マリアが自由に動いてボールを引き出し、中央を使えない時はサイドチェンジを多用してサイドからクロスやCKで得点を奪う。キエーザはコスティッチやディ・マリアと共存する適性ポジションを見つけられず、ポグバは負傷が続いてほとんど起用できなかった。

 来季は1億ユーロ以上の売却益の捻出とコストカットがマストと言われており、ヴラホヴィッチ一人で大金を稼ぐか、ローンバックのザカリア、マッケニー、アルトゥールを売り捌きたい模様。ラビオの契約延長が近づき、単年契約だったディ・マリアベンフィカへ移籍。

 

8位 フィオレンティーナ

 56P 15W11D12L 53G43C (予想6位)

 ☆MVP:ボナベントゥーラ ★MIP:クアメ

 イタリアーノ2季目で昨季の7位からステップアップを狙うシーズンとなり、主力の退団はトレイラのみに抑え、昨季はヴラホヴィッチ退団後に露骨に得点力が低下したCFにヨヴィッチを獲得し、不安定だったRSBにドドを獲得した。中盤から前線はリーグ屈指の選手層のスカッドを構築した。

 序盤からECL予選がミッドウィークに組み込まれて連戦を余儀なくされると、セリエAでは11節を終えて2勝のみで14位。ニコラス・ゴンサレスのコンディションが安定しなかったり、好調だったソッティルが負傷したり、ボールを保持してシュートを多く撃ってもゴールに決まらず、個人のミスによる失点も少なくなかった。ただ、イコネがフィットし、中断明けにカブラウが覚醒の予感を漂わせるなど、昨冬に獲得した2人が力を発揮し始める。1月から2月に6戦未勝利で再び14位まで転落し、ブーイングや解任論も湧き上がっていたが、24節以降は17連戦など超過密日程がありながら9勝4分2敗と期間内では2位の好成績を収めた。ECLとコッパ・イタリアは決勝まで進んだものの、どちらも決勝で敗れてタイトル獲得とはならなかった。

 得点7位タイ。シュート数3位、枠内シュート数4位。決定率8%。

 失点7位タイ。被シュート数最少PPDA10.6(1位)

 平均走行距離107.4km(15位)。ポゼッションタイム5位。パス成功数8位。ロングボール成功数最多クロス成功数2位CK数最多セットプレーからのシュート数最多

 4-3-3と4-2-3-1を併用し、積極的にターンオーバーを活用したことが公式戦60試合を戦うなかで個人とチームの成長に繋がった。保持ではビルドアップに携わる選手たちが揃って高精度のロングフィードを蹴ることが可能で、それを活かして左右のWGに大きな展開で渡していき、ドリブル、クロス、コンビネーションでサイドを崩していく。被保持は最終ラインでの同数を厭わない強度の高いハイプレスで、突破されれば大ピンチになるハイリスクを負っているが、データ上では敵陣ボール奪取から1点しか奪えておらずローリターンとなってしまった。

 来季はアムラバトの退団が濃厚。

 

9位 ボローニャ

 54P 14G12D12L 53G49C (予想13位)

 

 ☆MVP:ルイス・ファーガソン ★MIP:カンビアーゾ

 ヒッキー、テアテ、スヴァンベリと主力を担った有望株を売却し、新たにルクミ、ポッシュ、カンビアーゾ、モロ、ルイス・ファーガソン、ジルクゼーとポテンシャルを秘めた選手たちを獲得したが、開幕5試合未勝利で5年目のミハイロヴィッチを解任する。

 7節からチアゴ・モッタが後任に就くと、すぐに被保持を5バックから4バックに変更し、保持は3バックへの可変から始めて、徐々に4-2-3-1or4-1-4-1でSB、中盤、WGがポジションチェンジしながら敵陣に運ぶ形が様になっていき11位で前半戦を終える。1月以降の23試合は33得点24失点と攻守に安定したチームへと成長し、ピオーリが率い、ディバイオディアマンティがいた11-12シーズン以来の9位でシーズンを終えた。

 得点7位タイ。シュート数10位。決定率10%。オフサイド数2位。

 失点12位タイ。PK献上回数9回(18位)。タックル成功数4位。PPDA11.4(4位)

 平均走行距離109.6km(11位)。ポゼッションタイム7位。パス成功数5位

 マンネリ感が否めなかったミハイロヴィッチからチアゴ・モッタに監督が替わったことで新たな可能性が見出され、大きな成長を見せる選手が多く。カンビアーゾは偽SB の才能が開花し、ドミンゲスはダイナモからオールラウンダーへと進化した。また、ミハイロヴィッチの逝去を機にオルソリーニはエースの自覚が芽生えて一つ一つのプレーの正確性が改善された。

 シーズン中はチアゴ・モッタの引き抜きが噂されていたが、来季も続投しそうなのは朗報。関係が良くないと言われるアルナウトヴィッチの去就、ドミンゲス、シャウテン、ファーガソン、ポッシュらの売却判断、ユヴェントスへローンバックになるカンビアーゾの後釜がどうなるか。

 

10位 トリノ

 53P 14W11D13L 42G41C (予想9位)

 ☆MVP:ヴラシッチ ★MIP:アドポ

 ユリッチ2季目は守備の要ブレーメル、崩しのキーマンブレカロ、主将のベロッティらが退団するが、シャドーにヴラシッチ、ミランチュク、ラドニッチ、カラモー、ブレーメルの後釜にアヤックスからスフールスを獲得して戦えるスカッドを組み上げた。

 マンツーマンディフェンスはそのままに、ヴァニャのロングボールのこぼれ球を拾ってミドルゾーンでのボール保持という形が定着し、リッチを中心としたボール回し、スフールスの持ち上がり、左サイドのローテーション、ボランチの飛び出しと攻撃のバリエーションを増やした。1月にルキッチが移籍したが、イリッチがしっかり穴を埋める活躍を見せ、最終的に昨季から順位と失点数は変わらず、ブレーメルが抜けても守備力を維持し、負けを一つ減らして勝ちを一つ増やしたが、得点が4減り、課題の得点力不足を改善することはできなかった。13敗中10敗が上位7チーム相手で同格以下には安定した成績を残した。

 ホーム成績15位アウェイ成績4位

 得点14位タイ。シュート数13位。オフサイド数最多。決定率9%。

 失点5位。PPDA14.0(15位)。敵陣でボールを奪った回数8位。タックル成功数最少。

 平均走行距離110.0km(9位)。ポゼッションタイム8位。パス成功数7位。ロングボール成功数15位。ボールを前進させる速さ最遅

 ヴラシッチの買い取りはマストで、スフールスにはどのようなビッグオファーが来るのか。リッチ、イリッチ、ブオンジョルノ、シンゴ、ヴァニャにも良いオファーがありそう。

 

11位 モンツァ

 52P 14W10D14L 48G52C (予想12位)

 ☆MVP:ペッシーナ ★MIP:チュリーア
 ベルルスコーニ会長、ガッリアーニCEO体制でプレーオフを勝ち上がってクラブ史上初のセリエA昇格を果たすと、ペッシーナ、センシ、カプラーリ、ペターニャ、ロヴェッラ、イッツォ、パブロ・マリ、ラノッキア、クラーニヨら実力者を大量補強し、余裕ある残留を目指した。

 しかし、開幕5試合はボール保持の形こそ作れたものの、厳しい相手が続いたこともあり5連敗を喫し、6節で昇格組のレッチェに引き分けてストロッパを解任。7節からプリマヴェーラを率いていたパッラディーノが就任すると、初戦でユヴェントスからセリエA初勝利をもぎ取ると、3連勝で19位から一気に中位へジャンプアップ。その後もユヴェントスにシーズンダブル、インテルに1勝1分、ナポリからも1勝を奪うなど、パッラディーノ就任後の期間内成績は6位を記録し、余裕の残留を掴み取った。

 得点10位タイ。シュート数18位、枠内シュート数13位。オフサイド数4位。決定率11%。

 失点14位。無失点10回(8位タイ)。セーブ数6位。セットプレー失点数5(2位タイ)。PPDA12.6(8位)。敵陣でボールを奪った回数19位

 平均走行距離111.7km(4位)。スプリント距離17位。ポゼッションタイム3位パス成功数4位。ロングボール成功数6位。1回の攻撃に要する平均時間11.10秒(2位)

 ストロッパは3-1-4-2で保持をできても崩しのアイデアが足りず、怖さがなかったが、パッラディーノはすぐに3-4-2-1に変更し、3バックとダブルボランチで相手のプレスを引き出し、WBが低い位置からボールの前進とともに追い越していく擬似カウンターを機能させ、押し込んだ際はIBとボランチもサイドの攻略に関与し、積極的に攻撃に絡む姿勢を全員に植え付けた。被保持は相手によって前線を2-1、1-2、3-2に変更してマンツーマン気味の深追いしないミドルプレスで制限をかけた。

 来季はレンタル組の買い取りに支出が嵩みそう。ロヴェッラはユヴェントスに帰還し、カルロス・アウグストは人気銘柄なので退団か。チームが固まったので大きすぎるスカッドを整理して、適材適所の補強ができれば十分。

 

12位 ウディネーゼ

 46P 11W13D14L 47G48C (予想14位)

 

 ☆MVP:ワラセ ★MIP:ロヴリッチ

 途中就任で好成績を残したチョッフィが退任し、後任はセリエA初挑戦のソッティル。RWBのナウエル・モリーナが移籍し、後釜に収まるかと思われたソッピーも移籍。補強は無名選手ばかりで、デウロフェウ、ロベルト・ペレイラ、ベトの強力アタッカー陣に期待が集まる。

 開幕戦はミランに撃ち合いの末に敗れたものの、RWBにロベルト・ペレイラがフィットし、後半途中のゲームチェンジャーサマルジッチ投入が効果を発揮してローマとインテルも破る破竹の6連勝を飾り、一時は3位に位置する序盤のサプライズになった。その後はアタランタラツィオに引き分けたまでは良かったが、10試合未勝利で定位置の中位に復帰すると、デウロフェウの後半戦全休も影響し、再び上昇することはなく昨季と同じ12位に終わった。

 得点12位タイ。シュート数7位。枠内シュート数11位。オフサイド数17位タイ。決定率9%。

 失点10位タイ。無失点10回(8位タイ)。セーブ数15位。オープンプレー被シュート数5位失点数11位セットプレー被シュート数16位失点数4位タイ。PPDA13.9(14位)。

 平均走行距離105.5km(20位)。スプリント距離19位。ポゼッションタイム13位。パス成功数13位。

 ビルドアップではビヨルが列上げしたり、ワラセが降りたり、右肩上がりで4バックになってロベルト・ペレイラが内側に入っていったり、プレスをいなす術を多く持ち、ビヨルからは前線やサイドの裏にロングフィードが出てくる。アタッキングサードでは自由に動くデウロフェウがボールサイドに絡んで、密集をワンツーやドリブルで突破し、PA内にIHもWBも入ってフィニッシャーになる。被保持は基本的に5-3-2ブロック。

 ロベルト・ペレイラの契約延長、サマルジッチ、ビヨルらブレイク組の去就、ローンバックのウドジェ、ステップアップ濃厚なベカンの後釜探しと今オフも忙しそう。

 

13位 サッスオーロ

 45P 12W9D17L 47G61C (予想11位)

 ☆MVP:フラッテージ ★MIP:トレッソルディ

 ディオニージ2季目。スカマッカとラスパドーリを売却し、ベラルディとは契約延長。ピナモンティ、アグスティン・アルバレスロリアンテ、トルストヴェットら攻撃陣の新戦力に期待が懸かった。

 序盤からベラルディとハメド・トラオレが揃って負傷離脱し、崩しの切り札を失うと得点力不足に陥る。ロリアンテとフラッテージが気を吐いてチャンスを作るが前半戦は15位、中断を挟んで17位にまで下がってしまう。1月末に8戦未勝利で迎えたミランとの絶不調対決にアウェイで2-5の勝利を収めると、3月のインターナショナルマッチウィークまで5勝1分1敗とV字回復に成功するが、4月は2勝1分2敗、5月以降は6戦未勝利でシーズンを終え、初昇格した13-14シーズンの17位以来、最も低い13位に終わった。

 得点12位タイ。枠内シュート数8位。決定率9%。オープンプレーシュート数5位ゴール期待値38.13、ゴール数31PK獲得回数10回(1位タイ)セットプレーシュート数最少、ゴール期待値最低オフサイド数最少。

 失点16位失点期待値50.8セーブ数最少インターセプト数19位タックル成功数19位PPDA14.9(19位)

 平均走行距離106.0km(19位)。ポゼッションタイム11位。パス成功数11位。ロングボール成功数2位ボールを前進させる速さ3位

 格上にはカウンター、格下にはポゼッションと相手によってメインスタンスを変えた印象で、戦い方を問わず、ベラルディの在否が攻撃の質と迫力に大きな差を生んだが、全体的に決定力不足が目立った。昨季はデ・ゼルビが構築したスタイルにスカマッカへのロングボールをミックスし、今季はディ・フランチェスコ時代の趣を感じさせるサイドの揺さぶりとSB、IH、WGが連携する高速サイドアタックを見せた。一方で、失点期待値を大きく超える失点数でセーブ数は最も少なく、ボールを奪うことも出来なかった被保持の面で大きな課題を残した。

 来季はフラッテージのステップアップは避けられない。誰が後釜に選ばれるのか興味深い。

 

14位 エンポリ

 43P 10W13D15L 37G49C (予想19位)

 ☆MVP:ヴィカーリオ ★MIP:カンビアーギ
 監督が昨季途中までヴェネツィアを率いてエンポリと同じ4-3-1-2を採用していたザネッティに交代。ピナモンティとジュルコフスキがローンバック、アスラニとヴィーティが移籍と、各セクションから主力が退団し、フリートランスファー、降格組から即戦力のローン、上位陣から若手のローンで体裁を整えた。

 開幕前のコッパ・イタリア初戦に敗れ、開幕戦もスペツィアに敗れる幸先の悪いスタートを切ったものの、その後は同格以下に負けず、折返しの19節終了時点では10位につける。20節からはヴィカーリオが7試合欠場した影響もあり、13試合で1勝に留まり、残留争いに巻き込まれそうな15位まで転落してしまうが、33節から4-2-3-1にシステムを変更すると、最後の6試合を3勝2分1敗で走りきり、終わってみれば余裕のある勝ち点で残留を果たした。

 得点15位。シュート数12位、枠内シュート数16位。セットプレーシュート数8位、ゴール期待値6位、得点数7(11位タイ)。決定率8%。

  失点12位タイ。失点期待値59.4(16位)。セーブ数9位。オープンプレー被シュート数19位、失点数11位タイ。タックル成功数5位。クリア数最多。PPDA13.6(11位タイ)。敵陣でボールを奪った回数17位。

 ファウル数4位(少)。イエローカード数9位。レッドカード数7枚(最多)

 平均走行距離111.5km(5位)。ポゼッションタイム14位。パス成功数14位。ロングボール成功数16位。クロス成功数15位。

 保持とプレスは4-3-1-2、ブロックは2トップが降りて中央3レーンを封鎖する4-3-3という形が多かった。保持は4バックとアンカーから2トップへ縦パスや裏へのパスを入れ、トップ下とインサイドハーフが落としを受けて、サイドバックがオーバーラップで厚みを作る。インサイドハーフの片方がアンカーの横に降りるパターンも少なくない。4-2-3-1への変更でカンビアーギが左に張ってドリブルで仕掛けたり、クロスに飛び込んだり、アクパ=アクプロが右から中に入ってエブエヒがオーバーラップしたり、バルダンツィかファッツィーニがトップ下、グラッシとマリンのダブルボランチで攻守のバランスが安定した。

 来季はヴィカーリオがスパーズへ移籍し、パリージとバルダンツィには移籍の噂が絶えず、ローン組もカンビアーギはアタランタに復帰、マリンは買い取らない模様。エンポレーゼは不安しかなさそう。

 

15位 サレルニターナ

 42P 9W15D14L 48G62C (予想16位)

 ☆MVP:ディア ★MIP:オチョア
 昨季は冬の大量補強とダヴィデ・ニコラの就任により17位で残留を果たした。今季はマッジョーレやロヴァートら有望株と、カンドレーヴァやピョンテクといった実力者を獲得し、全体的に質を向上させた。

 コッパ・イタリア初戦で敗退するなど序盤戦はジュリッチの退団でロングボールを使った前進が機能せず、サイドのひし形で前進し、人数をかけて同サイドを崩しきる形にチャレンジ。シーズン途中にリベリーが引退を発表したが、中断までは12位とぼちぼちの成績で折り返す。セペの負傷でオチョアを獲得し、中断明けの2試合で16セーブを記録したが、アタランタには8失点の惨敗。直後にニコラを解任するが、後任が見つからずに即再就任でディアがLWGの4-2-3-1に変更し、レッチェには勝ったがヴェローナに敗れて16位に転落すると再解任で23節からパウロ・ソウザが指揮を取る。 3-4-2-1にシステム変更し、カスタノスのWBやボタイムのシャドーなどを機能させ、24節から10試合無敗を記録すると、ソウザ就任後16試合4勝9分3敗23得点20失点の好成績で残留争いに巻き込まれることなく残留に成功した。

 得点10位タイ。ゴール期待値37.4(17位)シュート数19位オープンプレーシュート数最少得点数6位タイ。決定率12%。

 失点17位。失点期待値68.6(最多)オープンプレー被シュート数最多。セーブ数3位。無失点7回(15位)。PK献上回数11回(最多タイ)PPDA15.7(最低)敵陣でボールを奪った回数最少敵陣でボールを奪いゴールで終わった回数5回(4位タイ)

 平均走行距離110.4km(6位)。スプリント距離16位。ポゼッションタイム17位。パス成功数15位。ロングボール成功数17位。クロス成功数19位。

 ディアの決定力、カンドレーヴァのゴラッソ、ラサナ・クリバリのハードワーク、オチョアのスーパーセーブがなければ、もっと苦しい終盤戦になっていたことは間違いない。ただ撤退するだけの試合や3バックが積極的に迎撃する試合など、試合ごとにインテンシティの高低に差がありすぎた。

 ディアはローンなので買い取りオプション行使後の転売が確実。ディアの穴を埋められなければ来季は厳しいか。

 

16位 レッチェ

 36P 8W12D18L 33G46C (予想18位)

 ☆MVP:ファルコーネ ★MIP:ジャンドレイ

 就任1年目でセリエB優勝に導いたバローニ監督が続投し、バルセロナからウンティティをローンで獲得するなど、欧州中から大量の選手を補強して、1年で降格となった19-20シーズンのリベンジ残留を目指した。

 シーズンを通して戦い方にブレがなく、アグレッシブなプレスとカウンター、素早くサイドのスペースを突いていく攻撃をやり続けた。アタッキングサードの質の低さが足を引っ張ったが、ファルコーネ、バスキロット、ウンティティ、ヒュルマンを擁するセンターラインが強固で、3失点以上喫したのが最終節のみという守備力が生命線となった。後半戦に6連敗があっても降格圏に落ちることはなかったものの、34節にヴェローナに敗れ、36節にスペツィアに引き分けた時は嫌な予感がしていたが、37節にラストプレーのPKをコロンボが決めて残留を掴み取った。

 得点18位枠内シュート数最少。決定率7%。

 失点9位。無失点6(18位)。セーブ数8位。オープンプレー被シュート数4位セットプレー失点数11(15位)インターセプト数3位タックル成功数最多。クリア数2位。PPDA12.6(8位)。敵陣でボールを奪った回数2位タイ

 ファウル数最多。イエローカード数12位。

 平均走行距離108.9km(12位)。スプリント距離7位。ポゼッションタイム19位。パス成功数19位。10本以上パスを繋いだ攻撃回数最少。

 アウェイに限った成績は12位。アタランタにはシーズンダブル、ラツィオには1勝1分と上位7チームとの対戦で2敗したのはユヴェントスだけだった。

 バローニは退任するらしく、冬から人気銘柄のヒュールマン、ローンのウンティティ、ファルコーネも退団となると来季は厳しいシーズンになるかもしれない。

 

17位 エラス・ヴェローナ

 31P 7W10D21L 31G59C (予想15位)

 ☆MVP:モンティポ ★MIP:ンゴンジュ

 昨季途中就任ながら3季連続のトップハーフ入りに導いたトゥードルが去り、65得点を挙げた攻撃の中心だったシメオネ、カプラーリ、バラクが退団。後任のチョッフィは3-1-4-2でフィジカル重視のスカッドを組んだ。

 しかし、コッパ・イタリア初戦で敗退し、守備の強度が低く、カウンターの基点を作れず、9試合で5ポイントしか取れずにチョッフィを解任する。10節からプリマヴェーラの監督を務めていたボッケッティが就任し、守備の強度が上がって内容は改善の兆しを見せたが、2回も前半に退場者を出すなど難しい試合展開を避けられず、6節から10連敗を喫し、勝ち点5の最下位で中断期間に突入する。1月からはセリエA初挑戦のザッファローニが就任し、ボッケッティがアシスタントコーチの体制になり、ンゴンジュ、ドゥダ、ガイチ、アビルゴーらセンターラインを補強すると、出場時間が多くなかったジュリッチを重宝してロングボールを多用するようになる。すぐに最下位を脱出して18位からジリジリ前進し、3バックではなく4-2-3-1だったり、マンツーマンプレスではなくミドルブロックを選択する時期を経て遂に34節で17位に立つが、その後の4試合で1ポイントしか奪えず、勝ち点で並んだ17位スペツィアとのプレーアウトに臨んだ。前半を3-1で終え、後半はファラオーニがPK献上と退場で苦境に陥るが、モンティポがスーパーセーブを連発して残留を掴み取った。ザッファローニ就任後の期間内成績は13位だった。

 得点17位。シュート数17位。オフサイド数3位。PK獲得回数1回(最少)。決定率7%。

 失点15位。オープンプレー失点期待値14位、失点数最多。セーブ数4位。PK献上回数3回(3位タイ)。PPDA14.2(16位タイ)。敵陣でボールを奪った回数10位。

 ファウル数19位(多)。イエローカード数最多。レッドカード数13位タイ。

 平均走行距離106.1km(18位)。ポゼッションタイム最短。パス本数最少。ロングボール成功数12位。クロス成功数10位。ボールを運ぶ速さ最速

 ビルドアップは放棄してロングボールとセカンドボール争いで勝負し、とにかく縦に速い攻撃でゴールを目指した。トマ・アンリとラザーニャが決定機を決めていればもう少し勝点を稼げていたのかもしれない。

 1年目で守備の要となったヒエンはステップアップが濃厚。来季も編成が重要。

 

18位 スペツィア

 31P 6W13D19L 31G62C (予想10位)

 ☆MVP:エンゾラ ★MIP:ホルム

 残留を達成したチアゴ・モッタを解任して、元ウディネーゼのゴッティを招聘。プロヴェデル、マッジョーレ、エルリッチと2季連続残留に貢献してきた選手が退団し、ドロンゴフスキ、カルダーラ、エクダル、アンパドゥとセリエAで実績がある選手を獲得した。

 開幕前のコッパ・イタリアのコモ戦で筆者の期待が高まる5得点を奪ったが、開幕すると、リスク回避のプレーが試合を経る度に多くなり、エンゾラのフィジカル頼みのサッカーになっていった。1月にはキヴィオルが移籍し、エスポージト、ジュルコフスキ、ヴィスニエフスキ、ショムロドフを補強するが、ホルムとバストーニの負傷離脱も影響して16位と17位を行き来する時期が続くと、22節終了後にゴッティを解任して、24節から一昨季にカリアリを残留に導いたセンプリチに残留を託す。それまでの5-3-2から4バックに変更し、就任3試合目のインテル戦で初勝利を挙げたが、その後は8試合未勝利で18位に転落する。残り4試合で5-3-2に再変更してミランに勝利するがラストスパートとは行かず、エラス・ヴェローナと勝ち点で並ぶ。順位表では直接対決の結果でスペツィアが17位だが、今季から勝ち点が並んだ場合はプレーアウトという新たな試みが採用され、ヴェローナに敗れて降格が決まった。あと1ポイントでも取れていれば、昨季のレギュレーションなら、というタラレバに泣いた。

 得点19位。枠内シュート数15位。ゴール期待値44.4(12位)。決定率7%。

 失点18位。セーブ数5位。クリア数3位。PPDA12.4(7位)。敵陣でボールを奪いシュートを撃った回数4位

 ファウル数3位。イエローカード数3位。レッドカード数2位タイ。

 平均走行距離106.7km(16位)。ポゼッションタイム15位。パス成功数17位。ロングボール成功数19位。

 ゴッティの5-3-2はウディネーゼのイメージのローブロックと言うよりもコンパクトな3ラインをミドルゾーンにセットすることのほうが多く、センプリチも中盤を噛み合わせてプレスに行くことがあった。ビルドアップはバックラインでパスを繋いでプレスを誘って前線のスペースやエンゾラへのロングボールで中盤省略でボールを運ぶ。データ通り、決定機を逃して損する試合が多かった。得点が欲しい後半途中にヴェルデ、マルディーニ、アグデロをWGに投入するキャラ変は効果的だった。

 エンゾラとホルムはステップアップが確実で、セリエBから獲得したばかりのエスポージトとヴィスニエフスキは個人残留しそう。

 

19位 クレモネーゼ

 27P 5W12D21L 36G69C (予想20位)

 ☆MVP:カルネセッキ ★MIP:メイテ

 26年ぶりのセリエA 昇格を果たしたが、ペッキアが退任して、セリエBで8位のペルージャからアルヴィーニを招聘。昇格に貢献したファジョーリ、オコリ、ガエターノといった若手がローン元に復帰し、セリエA経験者を中心に資金も費やして大量補強を行い、完全に新チームとなって残留を目指した。

 序盤戦から格上相手にも臆せず、マンツーマン気味のプレッシングや可変式でスペースメイクの意図を共有したビルドアップなど見応えのある良い試合をしていたが、降格圏のサンプドリアエラス・ヴェローナにも敗れ、18試合未勝利の最下位でアルヴィーニは無念の解任。ミッドウィークのコッパ・イタリアナポリ戦からバッラルディーニが就任すると、5-3-2でカウンタースタイルに方向転換し、ナポリPK戦で下すスタートを切る。準々決勝ではローマを破り、24節のローマ戦で今季セリエA初勝利を挙げた。しかし、バッラルディーニ就任後の期間内成績では17位と巻き返したものの、17位までは4ポイント及ばず、1シーズンでの降格が決まった。

 得点16位。シュート数11位、枠内シュート数14位。オフサイド数5位。決定率7%。

 失点19位セットプレー失点数18(最多)セーブ数最多インターセプト数2位。タックル成功数3位。クリア数5位。PPDA14.5(18位)。

 平均走行距離110.3km(7位)。ポゼッションタイム18位。パス成功数18位。ロングボール成功数最少。クロス成功数5位ボールを運ぶ速さ2位

 アルヴィーニはオケレケのライン間でボールを受ける上手さを活用して下から繋いで展開したが、バッラルディーニは前線に身体が強いサジューとチョーファニを重宝してロングボールが増えた印象で、攻撃色を強める展開では4-3-1-2を多用した。

 カルネセッキの未来がどこにあるのか。ムッソがスポルティエッロに終盤戦はレギュラーを奪われ、そのスポルティエッロがミランに移籍するので復帰してレギュラー争いになるのか。ユーヴェ、ローマ行きもあるのか。

 

20位 サンプドリア

 19P 3W10D25L 24G71C (予想17位)

 ☆MVP:レリス ★MIP:ザノーリ

 財政難のため、近年のチームを支えてきたカンドレーヴァ、エクダル、トルスビー、期待の若手ダムスゴーを売却。内容も結果も悪くてもジャンパオロを解任できず、フリートランスファーやローンでジャンパオロが好みそうなボールプレーヤーを獲得した。

 ジャンパオロは被保持は4-1-4-1ゾーンプレス、保持は左肩上がりの3-2-4-1の可変式ビルドアップを採用するが、昨季から内容も結果も進歩せず、開幕8試合未勝利の最下位で解任され、9節からスタンコヴィッチが就任。3-4-2-1か3-4-1-2でマンツーマン気味の守備に変更したことで球際の強度を出しやすくなったが、ロングボールを蹴るのにCFがカプートというジャンパオロ特化スカッドの弊害が出る。1月にカプートと入れ替わりでランメルスが加入するが、一度も降格圏から脱出することなく、スタンコヴィッチが辞意を表明しても解任できず、最下位で12年ぶりにセリエBへ降格となった。

 得点最少シュート数最少。ゴール期待値34.6。枠に当てた回数16回(4位)決定率6%

 失点最多。失点期待値67.3(18位)。セーブ数2位。クリア数9位PK献上回数11回(最多タイ)。PPDA13.6(11位タイ)。

 ファウル数17位(多)。イエローカード数19位(多)。

 平均走行距離106.2km(17位)。スプリント距離最短。ポゼッションタイム16位。パス成功数16位。ロングボール成功数14位。クロス成功数18位。

 最下位にふさわしく、全てにおいて低い数値を叩き出した。

 名物会長フェレーロが経営破綻に近い状態に追い込み、4部降格措置の可能性があったが、6月になってようやく売却先が決定し、来季はピルロが監督に就任する模様。

 

最後に

 今季はDAZNで5節までは7試合、6・7節は9試合、8節から全試合配信となり、363試合を観ることができた。2月末からはプレミアリーグを独占配信しているSPOTVでも観られるようになり、CL、EL、ECL、全ての大会でセリエAのクラブが決勝に進出するなど、セリエA視聴者の裾野が再び広がっていったシーズンだったと感じる。

 予想が的中したのは3位インテルのみで、ナポリラツィオもCL圏外に予想し、降格したスペツィアを10位にする攻めすぎた予想は笑って忘れてほしい。クヴァラとキム・ミンジェなんて知らないし、ゴッティはあまりにも保守的だった…良い意味で私の期待を裏切ったのはエンポリで、新たな逸材の台頭が不可欠と書いたらバルダンツィとカンビアーギが残留に大きく貢献した。モンツァの12位予想には監督次第と書いたが、パッラディーノ監督就任のお陰で11位になった。フィオレンティーナも最終的にECLとの二足の草鞋を履くことによる成長を見られた。個の頑張りを信じてぎりぎり残留の17位に予想したサンプドリアは、願い叶わず、ある意味で予想通りのボロボロのシーズンを過ごした。

 

 最後に、4シーズン目となったシーズン総括も、このあとに選手編を書き上げて今季で終了にする予定です。最近ではセリエAファン界隈が盛り上がって、自分一人でまとめる意味もなくなってきたうえに、そもそも面倒臭がり屋の自分には大変すぎました。自力でやることによって得る気付きもあるが大して得になることはなく、読者数も少なくアフィリエイト登録もしていないのに、自己満のハードワークを費やすのは有限な時間と体力の無駄遣いだと今は感じるので、某ファンカル様が存続される限りはお任せします。

 約19000文字の駄文をお読みくださった方々、誠にありがとうございました。今後ともセリエA並びにカルチョへの応援をよろしくお願いいたします。